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2012年12月 7日 (金)

神経質礼賛 852.「形外」の謎

 森田正馬先生の雅号「形外」の意味については以前書いたことがある(28話)。今年の森田療法学会の一般演題の中に、森田正馬の雅号「形外」の意味について、という発表があった。発表されたのは長年、禅的森田療法を行っている三聖病院に精神科医として勤務されながら佛教大学教育学部教授として教鞭をとってこられた岡本重慶先生である。岡本先生は今年の2月に京都森田療法研究所を設立された。同研究所のブログには「森田療法の原点にある仏教、禅や東西の思想などと生活体験の知恵を結ぶ」とある。治療としてだけの森田療法に飽き足らない方や森田療法をさらに深めたい方には、ぜひ御覧いただきたいすばらしい内容である。その中の「研究ノート」に研究内容を発表されている。1123日付の研究ノートには学会発表で用いられた(と思われる)スライドを公表されている。

 森田先生は若い頃「是空」という雅号を使っていたが、懇意にしていて正岡子規の門人でもあった日本美術の原安民のすすめで「形外」に改めている。そして、不思議なことに「形外」の意味について弟子や患者さんたちに語った記録は全く残っていない。そのため形外が何を意味するかについては議論のあるところである。この謎を解明すべく、岡本先生はまず原安民(1870-1929)について調査された。原安民は元の名は川﨑安で、博識ながら自由奔放な性格の人だったそうである。「人體美論」という本を出したが女性の裸体写真を載せたため発禁になってしまったこともある。東京美術学校鋳金科を卒業し、岡倉天心・橋本雅邦からの雑誌「日本美術」を譲り受け、明治38年、森田先生に連載記事の原稿を依頼している。その連載中に森田先生の雅号は「是空」から「形外」に変わっている。しかしながら、岡本先生は、いろいろ研究されていく中で、「形外」は原安民の思想ではなく、橋本雅邦、岡倉天心の美術思想から生まれたものだとされている。そして、それはさらに雪舟、雪村の絵画の極意「形相を外にして一点の邪念もない」とか「無心」にまで遡ると結論されている。従来、森田療法に関わる医師による解釈や森田先生の治療を受けた患者さんによる解釈はあったが、純粋に学問的に「形外」の意味を追及した研究は今までなく、今回の御発表は貴重な研究成果だと思う。

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