神経質礼賛 870.腹を立てない工夫
神経症圏の外来患者さんで、キレやすくて困る、という人が時々いる。男性・女性に限らない。当り散らす相手は、配偶者や親である。職場や外でやったら問題になってしまうので、身内という甘えもあって家庭内では暴言を吐いたり物を投げつけたりしてしまうのである。先日、ある外来患者さんが「ついイライラして妻に当り散らしてしまうと妻も怒って大ゲンカになる」と言っていたので、以前、247話「怒りの解消法」や442話「感情の法則と90秒ルール」に書いたことを話して、「奥さんに当り散らしそうになった時には、ちょっとトイレに行ってくるとか、他の部屋へ行って窓を開けて外の空気を吸って、ワンテンポ置いてみたらどうでしょうか」と勧めておいた。
そもそも、腹を立てなくて済む工夫はあるのだろうか。
森田正馬先生は、月1回の形外会の際に女性の参加者から、
「私はどうも腹が立ちやすく、その時は心悸亢進が起こったり、胸苦しくなったりしますが、そんな時にはどうすればよいでしょうか。なんとか腹の立たないようにする方法はないものでしょうか」と質問された。
それに対して森田先生は、
「腹が立って苦しく、いろいろの気持ちになるのは、寒い時に震え、暑い時に汗が出るのと同じように、ある事件に対する腹立ちという反応であり、現象であるからこれをどうする事もできない。このとき腹を立てないように工夫する方針をとると、その人はしだいにヒネクレの方に発展する。ただ腹の立つのはなんともしかたがないから、その衝動をジッと堪え忍んでいさえすれば、それが従順というものであります。これは体験すればなんでもない事で、理屈ではちょっと思い違いやすい事であります」(白揚社:森田正馬全集第5巻 p.93)と答えている。
やはり、腹が立つのはどうにもならない。自然なことなのである。腹が立ってしまったら、感情の法則を思い出して、怒りの感情はさておき、やらなければならいことをやっていき、自然に感情が消褪するのを待つのがベストである。
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