フォト
無料ブログはココログ

« 神経質礼賛 865.消費期限と賞味期限 | トップページ | 神経質礼賛 867.緑の山手線 »

2013年1月18日 (金)

神経質礼賛 866.薬の引き算

 3日前から読売新聞「医療ルネサンス」のコラムで「高齢者と薬」という話題を取り上げ始めた。第1回は「睡眠薬で認知機能低下も」という見出しで、認知症として治療を受けていた高齢者が、足のふらつきと食欲低下がひどくなって、他のクリニックを受診して、睡眠薬を短時間型のものに変更して減量しアルツハイマー型認知症の薬を中止されたところ、足のフラツキや食欲低下は改善し、物忘れもなくなったという例を紹介していた。

 このような例は時々経験する。ベンゾジアゼピン系睡眠薬の問題は以前にも書いた。筋弛緩作用のため、ふらつきや転倒事故をきたしやすい。高齢者では若い人に比べて腎機能が低下しているため、薬の代謝が遅くなって血中濃度が高くなりやすく、そうした副作用が出やすいのである。また、アルツハイマー型の「治療薬」は最近種類が増え、製薬会社間の競争が激しくなり、医療機関への売り込みも強力である。頭部CTやMRIの画像診断を踏まえ、日常生活の状態を詳細に把握した上でアルツハイマー型認知症と診断されるのならよいが、物忘れというだけで安易にそうした薬が処方される現実があるようだ。それらの薬剤は、食欲を低下させる副作用が出やすいばかりでなく、不眠、不穏といった問題を起こしやすい。在宅あるいは老人施設で精神症状が悪くて対応ができない、として入院になった方の中にも、薬を整理していったら、認知症治療薬や精神科薬はあまり使わずに平穏な日常生活が送れるようになる人がいる。ただでさえ高齢者は高血圧や糖尿病や高脂血症などの多くの薬を服用している。症状があるごとに薬の足し算をしていったのでは、副作用が出やすくなるし、薬同士の相互作用も出やすくなる。できる限り薬の引き算を考えることも大切である。


 
 精神科の世界では、かつて多剤併用がまかり通っていた。そんな時代に私の師の大原健士郎先生は教授回診の際、研修医に「ミッテル(独:Mittel 薬)は?」と尋ね、薬の種類が多いと、「薬は単剤で押すものだよ」と注意しておられた。統合失調症の治療で基本的な治療薬は抜くわけにはいかないけれども、睡眠薬や生活習慣病の薬は、生活上のアドバイスを繰り返すことで減量したりやめたりすることができる。なるべく低「脳薬」を心がけたい。そして、神経症の場合はできるだけ無「脳薬」が望ましい。

« 神経質礼賛 865.消費期限と賞味期限 | トップページ | 神経質礼賛 867.緑の山手線 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 神経質礼賛 865.消費期限と賞味期限 | トップページ | 神経質礼賛 867.緑の山手線 »

最近のトラックバック

2018年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30