神経質礼賛 882.梅
私が住んでいる街にはビルに挟まれた小さな天満宮がある。その前を通ってみたら、梅の花が咲き始めていた。今のところ三分咲きといったところだ。神経質人間だった菅原道真(381話・拙著p.223-224)は、「東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 主なしとて 春を忘るな(春な忘れそ)」の歌にあるように、梅を愛したことで有名である。彼を祀った各地の天満宮(天神さん)には必ずといってよいほど紅梅と白梅が植えられている。桜の花に比べると、まだ寒いうちから静かに咲く梅の花は神経質にとても似つかわしいような気がする。
「桃栗三年、柿八年」という言葉はどなたも御存知だと思う。芽が出てから実が成るようになるまでかかる年数から、何事も成就するまでには年月がかかるという喩えである。この言葉には実は続きがあって、「梅は酸い(すい)とて十三年」あるいは「梅は酸い酸い十六年」なのだそうだ。梅は桃、栗、柿よりもずっと実がなるまで年数がかかるのである。
神経質人間はスロースターターの上に、あちこち寄り道してしまう。症状もその寄り道の一つである。しかし、一旦目標を定めて動き出せば今度は簡単には止まらない。粘り強く努力を重ねてついには実を結ぶ大器晩成型なのである。努力しても他の人のように成果が出ないからといってガッカリすることはない。普通の人よりも年月がかかるだけのことだ。地道にやっていれば結果は後からついてくる。
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柚子の大バカ18年は聞いていましたが
梅のは知りませんでした
NHK教育で発達障害やASDの話をやっていました。
何をもって異常と正常を分けるのか難しいと感じます。
森田先生の教えは実際的で懐もたいへん深いと感じます。
投稿: たらふく | 2013年3月 4日 (月) 00時37分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
白状しますと、桃栗三年、柿八年の後は、私もうろ覚えで、確認してしまった次第です。植物も人間もずいぶん個性があるものですね。
発達障害がよく知られるようになったのは良い面もある一方、単なるレッテル貼りになりがちな問題もあります。大切なのはその人の特性をいかに活かすかです。ASDもその良さを活かすという姿勢が大切なのではないかと思います。神経質は病気ではない、としてその特性を活かすことを説いた森田先生の考え方は、神経質ばかりでなく、応用範囲が広いものだと思います。
投稿: 四分休符 | 2013年3月 4日 (月) 22時08分
「梅は酸いとて十三年」「梅は酸い酸い十六年」と言うのは、初めて知りました。梅とはそういう植物なのでしょうが、えらいものです。寒いうちから静かに咲く梅の花、愛しいですね。
投稿: | 2013年3月 6日 (水) 18時28分
コメントいただきありがとうございます。
梅の花は美しく、さらに実になっておいしくなるのも素晴らしいことですね。
投稿: 四分休符 | 2013年3月 6日 (水) 22時09分
お返事ありがとうございました。私もすごく酸いみたいです。今寄り道中ですが、梅を見習って静かに乗り切リたいと思います。
投稿: | 2013年3月 8日 (金) 02時14分