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2013年4月12日 (金)

神経質礼賛 895.気に入らぬ風もあろうに柳かな(2)

 書店員が選んだ2013年本屋大賞に百田尚樹さんの『海賊とよばれた男』(講談社)が選ばれた。これは出光興産の創業者・出光佐三をモデルとした経済小説なのだそうだ。第2次世界大戦後のどん底状態から死にものぐるいで戦い続けて日本を経済大国にした一人である出光佐三の姿を描くことで、経済が右肩下がりとなりさらには東日本大震災で打ちのめされた日本人を勇気づけたい、という作者の願いがこめられた作品だという。

 出光佐三(1885-1981)については以前689話で紹介している。大胆不敵な人物と思われるかもしれないが、元来は神経質な人である。「何かをやるにしても考えて考えて考え抜く。それが私の一生である」という自らの言葉のように、実際には慎重に熟慮に熟慮を重ねた上で、仙厓(90話参照)和尚の書画を見て「世俗にこびざる名僧の教えを受け、ひるむ心に鞭を打ちつつ家を出た」、そして恐怖突入していったのだ。

 一代で大企業を作り上げたような人はよく自分の写真を事業所の応接室などに掲げたがるものだ。しかし、出光佐三は部下から求められても決してそうしなかった。その代わりに各事業所に掲げさせたのが江戸時代の禅僧・仙の「堪忍柳画賛」という禅画である。風に靡く柳の絵の左側には「気に入らぬ風もあろふに柳哉」、右側には大きく「堪忍」の文字が書かれている。この禅画が出光佐三の心を支えていたのである。


 
 この句については森田先生も患者さんの指導の際に引用している。


 
 「気に入らぬ風もあろうに、柳かな」という事がある。「今度あの風が吹いたら、こんな風に靡(なび)いてやろう」とかいう態度が少しもなく、柳の枝は、その弱いがままに、素直に境遇に従順であるから、風にも雪にも、柳の枝は折れないで、自由自在になっているのである(森田正馬全集第5巻 p.318)と述べ、症状はあっても仕方なしに仕事をしていれば神経症がよくなっていくと説かれている。


 
 私たちの人生でも順風満帆というような都合の良い風はそうそう吹かない。むしろ無風だったり逆風に悩まされたりする時の方が多いだろう。風を変えようと思っても変えるわけにはいかない。柳のように気に入らない風は枝葉をなびかせて自然に受け流し、じっと耐えるしかない。そして、その間に熟慮を重ねた上で、機を見て内心ビクビクしながらも出光佐三のように思い切った勝負に出れば勝機はある。

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コメント

『海賊とよばれた男』はラジオの朗読で楽しみました。図書館で借りようとしましたが待ち人数が膨大で諦めました。

柳の句は何度か目にしてきたはずなのですが、今回初めて味わい深く読ませていただくことができました。

すいません、つい名前忘れますshock

たらふく様

 コメントいただきありがとうございます。

 嫌なものを嫌でないようにしようと「不可能の努力」をしてしまいがちなのが神経質人間です。柳のように受け流してしまえばかなりラクになります。私の場合、「気に入らぬ風」にまずカチンときてしまうのがいけないところだと反省しています(笑)。

 先生、こんばんは。
  
 私は「気に入らぬ風」が吹くと台風が来たように感じてしまうタチで、心の中は本当にものすごいことになってしまいます。いつまでたってもその点には変わりないのですが、先日までの長い仕事においては、そんな状態でも行動はなんとか目的本位でやれたように感じています。まだまだ危ういですが。

 柳といえば、思い出す所があります。私は昨年の晩秋に谷中・根岸を散歩したのですが、なかなか良い柳の並木道がありました。先生が「行ってみたい」とおっしゃっていた一葉記念館から子規庵へ向かう途中にあり、昭和通りとうぐいす通りを結んでいます。今からの季節、柳はいいでしょうね。またその風の中を歩いてみたくなりました。

 良い日曜日をお過ごし下さい。

anxiety様

 ビクビクハラハラでも目的本位に行動できればそれでよし!です。

 東京の文学散歩に適した場所は○○通りとか○○坂といった地名が素敵ですね。
 私が住んでいる街では城跡の内堀・外堀に沿って柳があります。地味な存在ですけれどもいい味を出しています。神経質人間と同じです。

気に入らぬ風もあろうに柳かな・・・しみじみ感じ入りそうな含蓄ある言葉ですね。会社で理不尽な指示を受けたりした時、この言葉を思い出し、感情本位にならず、事実本位でいけるように頭を切り替えます。ま、こんなこともあるさ・・・と。

神経質様

 コメントいただきありがとうございます。

 理不尽な圧力に対してまともに相手をしていてはかないません。受け流せる時は受け流す。ただし、パワーハラスメントのような度を超えた圧力をかけてくる場合には、声を上げたり、周囲に助けを求める必要があるかもしれません。このあたりは臨機応変な対応が必要かと思います。

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