神経質礼賛 910.緊張しない人はいない
先週の金曜日、博多の学会から帰っていろいろやりながらTVをつけていたら、NHKのスポプラという番組で、陸上の譜久里武選手を取り上げていた。譜久里選手は40歳以上では日本人でただ一人100m10秒台の記録を持っており、マスターズの世界大会に挑戦するのだという。譜久里選手は試合の時の緊張感を何とかしたい、緊張しないようにしたいと考えて、琉球舞踊の大家のもとを訪ね、緊張しないための極意について教えを求めた。ところが、その大家の言葉は「緊張しないようにすることはできない。私も緊張する」ということだった。
緊張に関しては今まで何度か書いている(4話・5話・49話)通りである。有名なスポーツ選手や演奏家や歌手たちでもみな緊張する。緊張しない人はいない。緊張して心拍数が上がり血圧が上がるのは、自然な反応なのであって、俊敏に戦う、場合によっては危険からすばやく逃れるためには必要なことなのである。逆に緊張が足りなければ十分に力を出すことができない。実際、緊張が足りない時には油断してセリフを間違えたりすると言っている俳優さんもいる。ところが、特に神経質な人は、自分は気が小さくて緊張するからいけない、気を大きくして緊張しないようにしたい、と考えがちである。それは「不可能の努力」(570話)というものである。緊張しないようにとこだわればこだわるほど緊張が気になって逆効果になる。緊張するのは当然である、とあきらめて、緊張しながらも一生懸命に行動しているうちにいつしか緊張していることを忘れる。その時にはその人の最大限の力が発揮できるのである。
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