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2013年6月 3日 (月)

神経質礼賛 912.野心

 土日当直が続いた翌日5月27日の朝、職員食堂でNHKのニュースを見ながら朝食(患者さんと同じ病院食)を食べていたら、林真理子さんの『野心のすすめ』という本が評判になっているという話題だった。アメリカや中国・韓国の若者に比べると、日本の若者は野心を持っている、という人が少ないというデータがあるのだそうである。番組では林真理子さんが東洋大学に出向いて就職活動中の学生さんたちと懇談する場面があった。学生さんからは、電車の中で疲れ切った会社員を見ていると、ああなりたくない、と思う、というような発言があった。すでに面接を受けても片っ端からダメで疲れている学生さんもいた。

 確かにこの御時勢、がんばって勉強したり働いたりすれば未来が広がっているという感じは持てない。頭や性格は悪くても抜群の家柄と莫大なカネがあれば総理大臣になれるけれど、一般庶民は夢が描けない時代である。そんな中、とりあえず食べていければいいや、というようでは、以前話題になった『下流の宴』(532話)の若者みたいになってしまうから野心を持ちなさい、と林さんは言っているように思える。林さんは強い野心を持って、マスコミのバッシングをものともせず、売れっ子作家になった。『下流の宴』に登場した若者の祖母・・・夫に先立たれて下着の訪問販売をしてお金を貯めて子供たちに学歴をつけて上流社会の一員にしようとした・・・の姿は林さんの化身だったのかもしれない。私も『野心のすすめ』を買ってみようか、と書店へ行って手に取ってみた。200ページにも満たない新書だからすぐ読めるだろう。しかし、パラパラ見てみると、言いたいことはすぐに想像できて、結局、買わずに書店を出た。

 野心もいわば「生の欲望」の一つである。森田正馬先生は神経質人間の生の欲望に着目し、それに沿って建設的な生活をするように指導された。最近は「生の欲望」が乏しい人が増えている、ということが言われているが、社会状況の変化が大きく、野心のような形で目に見えてきにくいということもあるだろう。それに野心があればいいというものでもない。あまり野心ギラギラで好戦的、スキあれば隣の人の物をいただてしまおう、というような人間としての品性を疑われる姿勢は感心しない。誰にでも生の欲望はあるはずだ。神経質らしく周囲に気配りしながら生の欲望を発揮していければ、必ずしも明確な野心がなくともよい。

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コメント

こんばんは。
自分は20代がちょうど80年代のバブル期で、エネルギッシュでギラギラした人がわりと多くいた記憶があります。この本の内容は分かりませんが、今また野心だとか、政治も政権交代後は連日ニュースで円が株が...と生々しくて、どうも個人的に苦手な時代に向かっているようです。最近の空気はちょっと心地が悪いです(汗)

kazu様

 コメントいただきありがとうございます。

 新聞や週刊誌・マスコミがこぞって政権をたたえ、景気がよくなる、株を買えと煽る全体主義みたいな流れは、どうも気持ちが悪いです。この調子で、さあ憲法改変、日本軍復活、徴兵制と軍隊ラッパを鳴らされた日には、たまったものではありません(心配性ですね)。野心ギラギラで強がろうとするより、弱い立場の人に配慮するのが日本人のよいところだと私は思っています。少子高齢化のため国力は落ちていくのですから、GDPが30位だろうが50位だろうが、その人その人の能力が発揮できて、安心して暮らせる社会を目指した方がよいと考えています。

この記事には全面的に賛成です。私は「少欲知足」を座右の銘にしています。「野心」というのは仏教で言う「欲」ということなのでしょう。欲には「大欲」というものがありますが、これは人のために何かを成すという「欲」で良いのですが、「野心」というのは個人的な利益を追求する生々しい欲望なのでしょうね。野心ばかり持っている人は心が静かになりません。心が安らぐことがないのです。利益追求のために自分の会社を大きくしようとか、もっと贅沢をしたいのでもっと沢山の報酬を得たいとかそういうのも野心というのでしょうね。そういうことを仏教では「貪欲」と言っていさめています。人間は欲の生き物で、欲が満たされるとさらにその上にある目標を目指そうという欲が出てきます。そうなったら欲のスパイラルでいくら行っても満足できません。これでは心が寛ぐことはありませんね。やはり人間は「少欲知足」が一番良いのだと思います。

スローライフ様

 コメントいただきありがとうございます。

 「少欲知足」はすばらしい言葉ですね。おっしゃるように「足るを知る」ということはとても大切だと思います。
 森田療法では立身出世も含めて「生の欲望」を肯定していますが、その欲望は「貪欲」ではありません。森田先生自身、郷里の小学校のために多額の寄付をし、学生さんの奨学基金にも出資しています。お金が人の役に立つように配慮しておられました。
 神経質人間はどうかすると自分さえよければ、という自己中心に陥りやすいのですが、神経質を活かせるようになると、自然と人のために行動できるようになってくるものと思います。

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