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2013年7月19日 (金)

神経質礼賛 927.レジリエンス(レジリアンス)

 最近、レジリエンス(レジリアンス)resilienceという言葉をよく聞くようになった。本来はストレス(重圧、ひずみ)と同様、物理学や機械工学で用いられてきた言葉であり、弾力性とか回復力を意味するものである。精神科領域で最も定評がある弘文堂の新版精神医学事典(平成5年初版)にはまだ載っていなかったが、同社の現代精神医学事典(平成23年初版)には載っている。それによれば「発病の誘因となる出来事、環境、ひいては病気そのものに抗し、跳ね返し、克服する復元力、あるいは回復力を指す」としている。ストレスという攻撃因子に対する防御因子とも言えるだろう。1970年頃から英米圏でこの概念に関心が寄せられるようになり、環境に恵まれない子供たちがいかに逆境を乗り越えることができるかというところから始まったようである。性格的な「脆弱因子」があっても「レジリエンス因子」が十分あれば病的状態に陥りにくい。ある研究者はレジリエンス因子として、自尊感情・安定した愛着・ユーモアのセンス・楽観主義・支持的な人がそばにいること、などを挙げている。


 
 神経質人間の場合はどうだろうか。悲観的になって凹みやすい面はあるけれども、強い自尊心は持っている。「自分はダメだ」と思いながらも「このままでは終わらないぞ」という強い反発精神を持っている。だからストレスに晒されて落ち込んでも底を蹴ってまた浮かび上がる力を持っているのである。一見弱そうで実は強いのが神経質である。

 森田療法は適応性を高めるという面を持っている。いろいろな出来事があっても、気分はともかく状況に応じて行動は続けていく。「四方八方に気を配る時、即ち心静穏なり 自転車の走れる時、倒れざるがごとし」という森田先生の色紙にあるように、ああでもないこうでもないとただ考えていたのでは倒れてしまう。周囲に気を配って行動していれば、自転車のペダルをこぎ続けているのと同様に多少の向かい風や上り坂があったとしても倒れることなく前へ前へと進んで行けるのだ。

森田先生のところでの入院生活の中には自然にレジリエンスを強化するしかけがあった。森田先生には父親的な厳しい面があったが、奥さんの久亥さんは母親的存在だった。だから優秀なお弟子さんや患者さんは森田先生のおそばに集まったが、優秀でないお弟子さんや患者さんは久亥さんの周りに集まっていたという。久亥さんは先生に内緒でお茶と羊羹をふるまってくれるようなこともあった。たとえ父親が叱っても母親がフォローしてくれる、そんな安心できる家庭的な温かみが備わっていたのである。入院生活を経験した患者さんたちは誰もが長い年月が経った後も久亥さんのありがたみを語っていた。ずっと心の中に久亥さんが生き続けていたのである。それから、月1回の形外会も生真面目一方ではなく、時には落語家を呼んで楽しんだり、患者さんたちが喜劇をしたり、ゲームをしたり、皆で東京音頭を踊ったり、ハイキングや旅行に出かけたり、ということも行われていた。森田先生自身も「綱渡りの芸」(畳の縁を綱に見立てて綱渡りの物まねをする)を披露された。ユーモアのセンスを伸ばし、気持ちを発散させるところもあったのである。


 
 昨今は、うつ病でも神経症(不安障害)でも、まず薬、というような風潮になってしまっているが、ストレスに対する抵抗力・自然治癒力を高めていくことが予防になるとともに、本当の治療なのではないだろうか。

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