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2013年8月23日 (金)

神経質礼賛 938.シャンビリ

 当ブログでは、神経症(不安障害)に対する安易な薬物療法の問題点についてたびたび指摘してきた。また、「薬を売るために病気はつくられる」(168話)というような実態もあることを述べてきた。

今週の読売新聞のコラム「医療ルネサンス」では抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬の常用量依存や退薬(離脱)症候群の問題に焦点を当てている。

 820日の記事は、退薬症候群についての話であった。最近はパニック障害・社交不安障害・強迫性障害などの不安障害にSSRIと呼ばれる抗うつ剤が処方されることが多くなった。その中でもパキシル(一般名パロキセチン)は特に強力な効果を持つ反面、急に薬を減量したり中止したりした時に離脱症状が起きやすい。コラム記事によれば、服薬中止時に「シャンシャン」という耳鳴りや「ビリビリ」する体のしびれや倦怠感などが起こりネット上では「シャンビリ」と呼ばれているという。そして、それらはベンゾジアゼピン系と呼ばれる多くの抗不安薬・睡眠薬でも起こるとしている。翌21日の記事には、パニック障害と診断されてコンスタンとハルシオンを処方されたていたエッセイストの話が出ていた。主治医は薬を増量する一方であり、自分で減量を試みたが「シャンビリ」に苦しんだそうである。聴覚過敏、耳鳴り、めまいに悩まされ、薬の量を元に戻すとそれらの症状は消失する。約3か月かけてようやく断薬したが、苦しさに歯を食いしばり続けたため歯を傷めてしまったという。

 製薬会社側では離脱症状を防ぐため、パキシルは従来の10㎎、20㎎錠に加えて現在では5㎎錠も製造していて、漸減しやすくしている。またパキシルCR錠という徐放剤を開発して血中濃度の変動を少なくして副作用を軽減するとともに離脱症状を起きにくくする工夫をしている。しかし、問題はパキシルだけでなく、他の抗うつ剤でも起きる可能性があるし、精神科以外でも簡単に処方されている睡眠薬や抗不安薬でも起きるのである。処方する医師の側で、どれだけ常用量依存や退薬症候群の危険性を意識しているだろうか。

 神経症レベルの不眠や不安症状に対しては、薬の処方はなるべく控え、処方するとしても、離脱症状が出やすいハルシオンやコンスタン(ソラナックス)・デパスといった短時間型で強力な睡眠薬・抗不安薬は避けるに越したことはない。薬一辺倒でなく、認知療法や森田療法的アプローチを行ったり、適切な生活指導をしたりするのが、本来の精神科の仕事である。森田正馬先生の次の言葉を肝に銘じる必要がある。


 
(自然良能を無視するの危険) 又、例へば不眠を訴へる患者に対して、多くの立派な医者が、之に徒らに、催眠剤を種々撰定して与へる事がある。而かも患者の不眠は、少しも良くはならない。この医者は単に不眠の治療といふ事にのみ捉はれて、其人間全体を見る事を忘れたがためである。其患者の毎日の生活状態を聞きたゞして見ると、豈に計らんや患者は、毎日・熟眠が出来ないといひながら、十二時間以上も臥褥し、五時間・七時間位も睡眠して居るのである。多くの医者は不思議にも、其患者の日常の生活状態や、何時に寝て・何時に起き・其間に如何に睡眠が障害されるか・といふ事を聞きたゞさないで、患者の訴ふるまゝに、不眠と承認して、之に催眠剤を与へるのである。(白揚社:森田正馬全集 第7巻 p.401

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コメント

先生、こんばんは。
私がパニック障害を発症したとき、パキシルとソラナックスを処方されました。

パキシルを飲むと目がチカチカして、のむことすら自分に負けた気がするし、フアフアする感じが恐ろしく、主治医に飲みたくないとうったえました。結局、漢方なら薬にたよる気持ちも薄らぎ、漢方を処方してもらいました、、、。

生真面目な性格から、なんとかならないかともがくなか、森田療法の考え方にふれ、薬がなくとも、快方にむかいました!
四分休符先生にも、助けていただきました。

もちろん、薬を正しく使って、治療効果をあげることは大切です。でも、私のように、考え方を学ぶ、教えていただくという治療法も大切にしていただきたいです。

私は先生のブログで、片寄った考え方を修正するきっかけをいただいています、本当にたすけられています。

アッシュ様

 コメントいただきありがとうございます。また、御自身の体験を披露していただきありがとうございます。

 薬は両刃の剣です。メリットとデメリットをよく勘案して処方する必要がありますし、薬を出された方も副作用や問題点をよく知っておく必要があります。風邪薬のように短期的に服用するものと違い、精神科の薬はどうしても長期にわたり服用することになりますので、なおさらです。また、効き方や副作用の出方には個人差も大きいです。薬に関しては神経質であるにこしたことはありません。
 パキシルやソラナックスは切れ味の鋭い薬であり、それらが必要な場合もありますが、使い方には十分に注意を払う必要があるということなのです。
 そして、神経症(不安障害)や軽度のうつ状態では、認知療法や森田療法の考え方が薬を少量にとどめたり薬なしで日常生活を送れるようにするのに役立ちます。

 

 

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