神経質礼賛 950.しつけの言葉
一風変わった研究がニュースに紹介されていた。神戸大学経済経営研究所の研究結果で、子供の頃、どのような言葉でしつけられていたかと年収との関連を調査したものだ。無作為に抽出した9万人のアンケートの中から仕事に就いている1万3千人余りのデータを集計している。しつけの言葉は8種類の中からの選択である。
「うそをつかない」ようしつけられた人の年収は平均448万円でそのようにしつけられていなかった人の平均年収398万円よりも50万円高かった。「他人に親切にする」「ルールを守る」「勉強する」ようしつけられた人はそうでない人よりも29万円から15万円高かった。そしてこれら4つの言葉すべてでしつけられた人の平均年収は479万円で4つの言葉のうち一つもなかった人の平均393万円との差は86万円にもなったそうである。また、「挨拶をする」「ありがとうを言う」というしつけは年収には関連がなかったという。
もちろん年収が多ければいいというものではないけれども、年収は社会適応の良さを示す指標の一つと考えられるだろう。4つのしつけは社会集団の中で信頼され認められる上で特に重要なことのようだ。
森田療法には再教育・しつけのしなおしという側面がある。森田先生の言葉には「事実唯真」などのすばらしい言葉があるが、わかりやすく患者さんを指導するのに用いた言葉は「物そのものになる」とか「なりきる」あたりだろうと思う。そして、そのようになるよう「見つめる」「手を出す」ということを言われた。先のアンケートの4つの言葉で言うと、そもそも神経質人間は嘘をつくのは苦手である。ルールには敏感できちんと守ろうとする。いやだなあ、と思いながらも不平を言いながらも、いざ始めればよく勉強する。欠けているのが「他人に親切にする」である。森田先生は、人を便利に幸せにするために手を出していくように指導されていた。そうなると、自然に「症状」も忘れることになり、人の役に立つ行動によって周囲の人々からの評価が上がることになる。さらに、自己中心的な親切にならないよう、「人に親切と思はれようとすれば 親切の押売りになり 人を悦ばせようとすれば 即ち親切となる」という色紙も書かれている。単に神経症を治すだけでなく、自然に社会適応力を高める教育だったのだと思う。
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