神経質礼賛 956.土佐人気質
森田正馬先生は単に神経質であるだけでなく、大変な負けず嫌いであり、粘着性があった。私の師の大原健士郎先生は、森田先生と同じ高知出身ということもあり、よく講演の際、土佐人は陽気で楽天的な反面、たぶんにしつこい面を持っている、と話しておられた。心理学者の宮城音弥は「黒潮の流れに沿って粘着気質が認められる」としている。また、土佐の精神科医 澤田淳は土佐人気質「いごっそう」(頑固で気骨のある男性を表す言葉)を闘犬型、長尾鶏型、チャボ型の3型に分類できるとしている。攻撃性の強い闘犬型の人物としては、岩崎弥太郎、浜口雄幸、吉田茂がいる。コツコツ辛抱強く尾長鶏を作り上げていくタイプには、牧野富太郎、寺田寅彦がいる。目立たないチャボ型は中江兆民、幸徳秋水が入る。坂本龍馬は闘犬型とチャボ型の混合なのだそうだ。澤田は森田先生を長尾鶏型に入れているが、大原先生に言わせると、森田正馬先生は辛抱強くしつこい面があると同時に攻撃性が強く負けず嫌いなので、闘犬型と長尾鶏型とが混じったものだと考えられる、とのことだ。
今週、漫画家・やなせたかしさんの訃報が流れた。御存知アンパンマンの生みの親である。やなせさんの郷里・高知県香美郡は、以前書いたように森田先生の出身地でもある(842話)。やなせさんは漫画家としては極めて遅咲きだった。漫画家になったのが30過ぎ。大きなヒット作品が出ないまま50を過ぎて描き始めたアンパンマンは大人たちには不評であり本もあまり売れなかった。しかし、弱っている人に自分の顔をちぎってあげて元気を与えてくれる心優しいヒーローは、純粋な気持ちを持つ幼稚園児たちの心をしっかりつかんで、やがて不動の人気作品となった。アンパンマンを取り巻くサブキャラクターたちも、ほのぼのとした雰囲気を醸し出して愛されている。
やなせさんも森田先生と同様、「いごっそう」であり、独立独歩の精神で辛抱強く自分の考えを貫き通して偉業を成し遂げたのだと思う。そして、亡くなるその日まで病気を抱えながら仕事を続けておられた。まさに生き尽されたのである。
私たち神経質人間は、土佐人ではなくても「いごっそう」的な面をもっている。意地っ張り、強情者である。その特性を生かして、森田先生ややなせさんのようにコツコツ粘り強く仕事をしていきたいものである。
« 神経質礼賛 955.楽章間の拍手 | トップページ | 神経質礼賛 957.カマキリ »
四分休符さん、こんにちは。
記事を興味深く読ませていただきました。
神経質な人は、確かに意地っ張りで強情なところがありますね。
また、物事をコツコツ粘り強く行うというのも神経質な人の特性だと思います。
後者のほうはいいのですが、「意地っ張りで強情」というのは人間が精神的に成長し円熟味を増すとその傾向は薄れると思うのですが如何でしょう?
それともこの特性はいつまでも持ち続けるほうがいいのでしょうか?
投稿: スローライフ | 2013年10月19日 (土) 13時40分
スローライフ様
コメントいただきありがとうございます。
気質は持って生まれた部分が大きく、なかなか変化しにくいものです。しかし、経験を重ねていくうちに、人は社会や家庭にうまく適応するようになっていきます。それも一種の精神的成長と言えるかもしれませんね。どんな気質にも長所と短所があります。長所を生かし短所をカバーできるようになればよいわけです。「意地っ張りで強情」ないわば自己中心的な部分はあっても、神経質には同時に人が自分をどう思っているかを気にする面が強いので、周囲の人たちに配慮する、人の立場に立って考えることを身につければ、気配りがいき届いた好人物として評価されることになります。そして、へこたれそうな難局を頑張り抜くのに、「意地っ張りで強情」を生かせばよいはずです。この特性そのものは簡単には変わりませんから、まさに「あるがまま」、楽観も悲観も必要ないかと思います。
投稿: 四分休符 | 2013年10月19日 (土) 23時25分
四分休符先生様、こんにちわ。今回のテーマ気質とは関係ないのですが、ちょっと意見(アドバイス)を頂けたらと思い、急に相談させていただいております。よろしければお願いいたします。実は、この度、離婚いたしました。奥さんに振られたような格好なのですが、8年間連れ立ってきたので、寂しくもありつらくもあり、悲しく思っています。私は森田先生の感情の法則を思い出し、つらさが薄れるまで何とかがんばって仕事も精一杯やっていこうと思っておりますが、それでよろしいのでしょうか?離婚された方はどのように悲しみを盛り超えていかれるものでしょうか?
投稿: 神経質 | 2013年10月20日 (日) 17時51分
神経質様
今、非常につらい状況にあることと思います。心境をお察しします。離婚に至った経緯等不明なので、適切なアドバイスができるかどうかわかりませんが、一般論としては、可能であればつらいながらも今抱えている仕事に取り組んでいく、そして時間が解決してくれるのを待つということになるかと思います。「感情の法則」はきっと役立つことでしょう。
投稿: 四分休符 | 2013年10月20日 (日) 21時15分
先生、アドバイスありがとうございます。経緯は書くと延々となるから省きました。しかし、感情の法則と先生のアドバイスで何とかやってみます。しかし、つらくなると先生にアドバイスを頂くばかりで、何かお返しができたらいいのですが・・・。森田療法の教えはつらい時、いつでも支えになります。
投稿: 神経質 | 2013年10月22日 (火) 22時28分