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2013年10月 2日 (水)

神経質礼賛 951.生きる力

 

 先週の水曜日、正知会(しょうちかい:924話参照)の会長さんがお一人で病院に森田正馬先生の資料探しにおみえになった。その時、「帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんの『生きる力 森田正馬の15の提言』という本を読まれましたか?その中に絶対臥褥は嫁と姑といざこざがあった時に一方が3、4日臥褥する土佐の風習からきていると書いてあるんですが、聞いたことがありますか?」と尋ねられた。その本が出ているのは新聞広告で知っていたが、精神科医の作家が書いた本だけれども森田療法家ではないはずだよなあ、そのうち本屋に並んでいたら見てみよう、くらいに思ってそのまま忘れていたのだった。その日の帰りに書店の端末で検索すると、在庫なしとなっていた。高い本ではない(1050円)から、帰宅してからアマゾンで注文する。

 

 本が届いて早速開いてみると、その絶対臥褥の話は6ページに書かれていた。正知会の会長さんが言われた通りであった。臥褥が終わると双方が歩み寄って良い嫁姑関係になるのだという。絶対臥褥のルーツが土佐の風習にあるという話は森田先生の本にも書いてないし、私が知る限り森田療法関係書にも書かれていない。もし、大原健士郎先生が御存知だったら高知県人としてきっと本に書かれたはずである。だからその風習は土佐でもそれほど一般的ではなかったのかも知れない。森田先生は若い頃、呉秀三教授の命を受けて「土佐の犬神」について高知県の各地を調査して回ったことがあって、その際にそうした風習を知った可能性がある。森田先生は神経症の治療に当時のありとあらゆる治療法を試された。そしてだめなものを捨てて役に立つものを拾った。さらに改良に改良を重ねていった。初期の論文では絶対臥褥の期間を4日間としているものもあるので、土佐の風習からヒントを得た可能性は高いだろう。その後、多くの症例に使ってみて、臥褥期間は1週間に延び、現在の森田療法でも1週間となっている。

 


 
 この本の著者は「正馬の提言は、普通人においてこそ、より強力な効果を発揮する」と考えておいでである。選んだ15の言葉についても、神経症の治療と言うより一般人の人生訓として役立つことを意識して書いておられる。一昨年、私はメンタルヘルス岡本記念財団の講演会で、一通り森田療法について説明をした後で、森田療法には単に神経症の治療というだけではなく、東洋思想をベースとしてよりよく生きるための指針を示している面があり、その究極の言葉は「己の性(しょう)を尽くし、人の性を尽くし、物の性を尽くす」つまり「生き尽くす」だと考えている、と話した。この本の筆者も15の言葉の中で「生きつくす」を最後に持ってきていて興味深かった。200ページとやや薄い本の中で、森田先生が東大の学生時代に神経衰弱・脚気と診断され、たまたま仕送りもストップして「親の面当てに死んでやる」と死ぬ気で猛勉強したら症状は消失し試験も好成績だったというエピソードを3回も書かれていたり、正岡子規のエピソードも繰り返し出てきたりするのがちょっと気にはなるが、画家・香月泰男の話はとても印象深かった。森田先生の考え方を一般の人々に理解してもらうという意味では良書だと思う。

 

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