神経質礼賛 973.プア充
プア充という不思議な言葉を聞いて何だろうと思う。宗教学者・作家の島田裕巳氏が言い出した言葉であり、ストレスをためず出世を望まず年収300万円位で自分の生活を充実させていくような生き方を言うらしい。確かに成果主義の社会になって、会社側は社員により厳しいものを求めていて、心身ともに疲弊しきった人たちが精神科をよく訪れるようになった。それを考えると、そこそこ仕事をして、出世せず収入は少なくても趣味などで充実した生活が送れた方が得な生き方なのかもしれない。年収300万円と言えば大卒の初任給20万円にボーナス年3ヶ月分を加えた位だ。税金や年金などを引いて手取り月15-16万円ともなれば、都心近辺ならばアパート代で半分は消える。地方ならばアパート代は安くても移動の足として車は必要だから、結局似たようなものだろう。食費や光熱費やケータイ料金などを引いたら、一応自由に使える額は2-3万。それから衣料費や交際費も必要になるから、なかなか厳しい。ただ、どこかで節約すれば浮かせられるお金も出てくるから、あまりお金のかからない趣味や教養にかけることは可能ではある。サービス残業や休日出勤をしなければ、学生時代に比べれば少ないながら十分に自分の時間が持てる。「少欲知足」を今風に実践したライフスタイルと言えるかもしれない。
しかし、20代・30代の生き方としては少々枯れすぎていないだろうか。もし、若い人たちが皆プア充を目指したら、結婚して子供を持ちたいとかマイホームを持ちたいという人が減って、景気は低下の一途をたどり、少子高齢化も一層進むことになる。年金生活者のプア充はわかるが、若い人にはもうちょっと「生の欲望」を発揮してほしいところである。
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