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2014年3月31日 (月)

神経質礼賛 1010.増税社会を生きる

 私が住んでいる地方では桜がほぼ満開となっている。そして、いよいよ明日から4月。消費税が8%にアップする。昨日の毎日新聞トップ記事には「ため息の春 消費増税 転嫁ずしり」のタイトル。ガソリンスタンドの前を通ったら今のうちにガソリンを満タンにしておこうという人たちで長蛇の列が道路に続いていた。スーパーマーケットやホームセンターもいつもより混雑していて、買い物かごに溢れんばかりの商品を積んだ人たちの姿が目に付いた。ただ、1007話に書いたように日用品は需要の増加から実売価格が上がっているものもあるし、家電は値崩れが考えられるので、買急ぎムードに乗せられて高い買い物をしては損をするかもしれない。最近、今までの税込価格から税抜き価格に表示を変えた店が多く、安くなったような錯覚を起こしてしまう。税金分を考えて、冷静に判断する必要がある。

 さらに来年の10月には消費税10%に上がるスケジュールとなっている。先進諸国の消費税が20%前後になっていることを考えれば、高齢化の中で社会福祉を維持するために、いずれは日本もそうせざるをえなくなるだろう。しかし、ワーキングプアの人たちには大きな負担がかかる。生きていくのに最低限必要な食料品や電気・ガス・水道・電車・バスといった公共料金は免税にしてほしいと思う。

 さて、これからの増税社会を私たちは生きていかなくてはならない。そろそろ今までの生活を見直してみる必要がある。高度成長期のようにマイホームや高級自動車を手に入れて海外旅行やゴルフを楽しんでシアワセになろう、という発想から転換しなくてはならない。すでに、車も燃費が良くて維持費が安い小型車や軽自動車に買い換える人が増えている。大人数が乗れるワゴン車は子供たちとドライブにでも行かなければ必要ない。買物や家族の送迎が主な用途であれば軽自動車で十分である。スマートホンから通信費が安い従来型の「ガラケー」に戻す人も増えている。なるべく無駄なものは買わず、シンプルライフを心がけていけばよいのではないだろうか。お中元や御歳暮も見直す時期ではないかと思う。冠婚葬祭の「引き物」は極力廃止して、法事であっても会費制にするのが望ましい。そして、あまりお金をかけずに楽しめる趣味はいくらでもある。無駄な出費は避けて、「物の性(しょう)を尽くす」・・・その物の価値が最大限に発揮されるように使う、という森田正馬先生の生活スタイルを心がけたい。

2014年3月28日 (金)

神経質礼賛 1009.一期一会

 今週の月曜日、BS-TBSの番組「謎解き!江戸のススメ」のテーマは桜田門外の変だった。その際に暗殺された井伊直弼と言えば、吉田松陰らを処刑した「安政の大獄」を断行した人であり、強権を振るう独裁者のイメージがあったが、この番組を見て私の中での人物像が変わった。一期一会という言葉を広めたのが井伊直弼だったとは知らなかった。

 井伊直弼(1815-1860)は彦根藩主の十四男として生まれ、将来藩主になる可能性はほとんどなかった。兄たちは有力な大名家の養子に迎えられたが若い時の直弼はその道もなく、捨扶持を与えられて儒学・国学・禅・武道・和歌・茶道・音楽・能などを学んで過ごしていて「茶歌鼓(ちゃかぽん)」とあだ名されていたという。たまたま父の次の藩主だった兄の跡継ぎが亡くなり、藩主への道が開ける。藩主になってからは藩政改革を行い、名君と評価された。井伊家は譜代大名の中ではトップ格であり、幕府の相談役的な立場にあったから攘夷か開国かという大きな決断を迫られる時に大老に就任し、すでにバラバラになっていた幕府をまとめ、列強の植民地になることを防ぐために、やむを得ず安政の大獄・日米修好通商条約締結の決断をしたようだ。しかし、強権を振るっていたように見えても、内心ではかなり悩んでいたような資料も残っているという。弱い面を押し殺して仕方なしに強く振舞っていたのだろう。若い頃の文人生活を考慮すると井伊直弼は決して豪胆な人ではなく、実は神経質人間のお仲間だったのかもしれない。暗殺計画を事前に察知した人物から登城の際の護衛を増やすように忠告されても、大老が決まりを破っては示しがつかないと言ってそのままで登城して討たれ、暗殺は覚悟の上だったと言われている。このあたりも必要以上に規則を守ろうとする律儀な神経質の特徴が出た可能性があると思う。

 3月末から4月の初めは別れと新たな出会いの季節である。一期一会という言葉を思い起こす方も多いだろう。この言葉の考え方自体は千利休がすでに唱えていたが、井伊直弼が自著「茶湯一会集」の巻頭に記して多くの人々に知られ使われるようになったという。直接的な意味は、一生に一度会うこと、一生に一度限りであること、であるが、茶道の世界では、もう二度とないこの一瞬を大切にして今できる限りのもてなしをすることを言う。この考え方は、今を生きる、そして生き尽すことを説く、森田療法の考え方にも相通じると思う。

2014年3月24日 (月)

神経質礼賛 1008.見たところに仕事あり

 森田正馬先生は巣鴨病院(現在の都立松沢病院)や根岸病院に勤務し、有効な薬物療法もなく精神病患者はただ病院に隔離しておくだけに等しかった時代に作業療法を積極的に治療に取り入れていた。日本の精神病院における作業療法のパイオニアとも言えるだろう。一方、森田医院での、神経症の治療としての作業では、当初は先生が「豆選り」などの作業を考えて患者さんにあてがう、というところから、しだいに患者さんの自主性に任されるようになった。ただ与えられたことをやるだけでは、退院して実生活に戻った時に、日常生活の中でやるべきことを自分で見つけて行動していくのは困難である。時には先生が作業を指示することもあったが、周囲を見つめ、神経質を発揮していくことが求められた。だから、患者さんたちは仕事探しに苦労したようだ。まごまごしていると他の患者さんが仕事を見つけてしまい自分の仕事がなくなってしまう。苦し紛れに古い板塀を雑巾で拭いていて先生に叱られるような患者さんもいたことは、山野井房一郎さんの著書『神経質でよかった』に詳しく書かれている(660話)。

 不思議と仕事が忙しい時の方が仕事がはかどるばかりでなく、わずかの間をぬって趣味を充実させることもできる。休日が続くと、すっかり気が緩んでダラダラ過ごしてしまい、そのうち暇になったらやろうと思っていた家事仕事は進まず、かと言って趣味や遊びもできなかった、というような経験はどなたにもあるだろう。

 「何もすることがない」とゴロゴロしている方にピッタリの言葉がある。見たところに仕事あり。あえて仕事を探そうと焦らなくても自分の周囲を見つめれば、やるべき仕事が見つかるのだ。部屋の中を見れば、ホコリがたまっている場所もあれば、処分したほうがよい古雑誌もある。窓もずいぶん汚れていれば、網戸の目詰まりにも目が行く。トイレの汚れにも気が付くし、浴室の黒カビも目に止まる。神経質人間は、すぐ仕事の手間を値踏みして「やらなきゃならないけど、手間がかかりそうだ」とか「めんどうだなあ」と考えて「そのうちまたやろう」と先送りしがちであるが、とりあえずちょっといいから手を出してみる。もう少しやってみようか、というようになってくるとしめたもので、取っ掛かりは悪いけれども一旦動き出したら簡単には止まらない神経質の特性が発揮されて、仕事が片付いていく。神経質エンジンがフル回転となる。そうなると後から充実感もついてきて、面白いように仕事がはかどり、仕事三昧となっていくのである。

2014年3月21日 (金)

神経質礼賛 1007.増税前の買い急ぎは慎重に

 いよいよ4月1日から消費税が5%から8%に上がる。定期券は3月中に買っておけば5%で買えるから早めに買っておこうという動きがある。以前、消費税が3%から5%に上がった時にはタバコを大量に買い込んだヘビースモーカーがよくいたが、今回も同様だろう。この際、衣類、雑貨、日用品を買いだめしておこうという人も多い。価格変動がなく消費期限の問題がないものであれば今月中に買うに越したことはない。なるべくカード払いにして支払いは後にして、とりあえず品物を確保しておこうという人もいるだろう。庶民のささやかな自衛策である。そこを煽って、買うのは今、というキャッチフレーズのチラシがよく入ってくる。確かに大きな買物だと、消費税3%の上昇は大きな違いになる。だから、自動車も今週中に契約しておけばナンバー登録が3月中に間に合って税率5%で買えるから、と販売店が一生懸命になって宣伝している。電化製品でも冷蔵庫やエアコンやパソコンなど高額商品を今のうちに買い替えておこうと焦っている人もいるだろう。

 しかし、ちょっと待った。冷静に考えてからの方が良いのではなかろうか。自動車の場合、消費税が8%、10%とアップして需要の落ち込みを防ぐため、多少ではあるけれども自動車税の減額措置がある。それに、税率アップの反動で需要が落ち込めば、値引き額が今よりは大きくなる可能性がある。あわてて買い替えるよりも今の車を乗り続けながら、よく吟味して新車選びをする方がトータルではトクになるかもしれない。高い買物だけに慎重にした方が良い。家電の場合は型落ちになれば安くなる。今買おうと思った機種は半年とか1年後には価格が下がっているだろう。消費税がアップしても後で買ったほうがトクということもありうる。日用品にしても今年になってから買いだめ需要の増加に連動して実売価格は上昇傾向にある。例えば、トイレットペーパーやティッシュペーパーは明らかに値上がりしていて、増税後に需要が減少すれば価格も少し下がる可能性があるだろう。トクか損かよく考えてみる必要がある。サイフのヒモが緩みすぎて不用品まで買ってしまわないように注意が必要だ。業者の煽りに乗らないで、神経質を生かして上手に対応したいものである。

2014年3月17日 (月)

神経質礼賛 1006.新しい花粉症治療薬

 『今日の治療薬』(南江堂)という本が毎年出ている。以前は毎年3月になると自分用に買っていたが、1冊5000円近いので、最近は1年おきにしている。このほど2014年版を買った。抗アレルギー薬の項目を見ると、アレルギー性鼻炎(花粉症)の新しい薬が掲載されていた。

 まず一つはディレグラ(20132月薬価収載)。何だかアレグラと似た名前だと思われた方もいるだろう。これは抗アレルギー薬のアレグラにエフェドリンを加えたものである。エフェドリンは交感神経刺激薬であり、気管支を広げて咳止め効果を示したり、鼻粘膜の充血を改善したりする効果がある。花粉症によるつらい鼻づまりにも効きそうであるが、心悸亢進や発汗や不眠をきたす可能性があるので、神経症の方は避けた方が無難かもしれない。

 もう一つは以前から注目されていたシダトレン(201311月医薬品各部会承認)である。これはスギ花粉エキスであり、これを毎日1回長期間舌下投与する減感作療法により花粉症を根治できる可能性がある。うまくいけば鼻炎症状と結膜炎症状の両方とも出なくなる。ただし即効性はないし、誰でも治るというわけではない。アナフィラキシーショックを起こす危険性もある。従来の注射による減感作療法よりは楽ではあるが、やはり2年とか3年とか通院する必要性がある。講習を受けて資格を取った耳鼻科医が健康保険で処方できるようになるのは、今年の6月頃になるという話である。

 今のところ、今年は花粉の飛散が多かった昨年に比べれば飛散量は減少しているらしく、私自身、昨年に比べて症状は軽い。とは言っても、抗アレルギー薬のクラリチンを服用し、ザジテン点眼液とフルチカゾン点鼻液を使用しての話である。例年と同様に、外出時は必ずマスクを着用しているし、家に入る時には衣類を手で払って花粉を落とし、すぐに手を洗う、というように神経質に対処している。

2014年3月14日 (金)

神経質礼賛 1005.春のコンサート

 先月、病棟行事での演奏依頼があった。3月は措置診察の担当月ではないことを確認して、依頼をお受けした。安請け合いして当日に保健所から措置診察の依頼があったらそちらを優先せざるを得なくなり迷惑をかけてしまうからだ。秋(714)、初夏(794)、クリスマス(854)以来しばらくぶりの出番である。春らしい曲を集めたプログラムを考えた。最初の3曲はクラシック曲で、モーツァルト作曲ディヴェルティメント・ニ長調K136の第一楽章、シューマン作曲クライスラー編曲「ロマンス」、ドヴォルザーク作曲「ユモレスク」。次が、「みんなで歌おうコーナー」として、「春が来た」「春の小川」「おぼろ月夜」。最後は再び演奏で「卒業写真」、となりのトトロからテーマ曲、魔女の宅急便から「海の見える街」という内容にした。例によってパソコンに自分で楽譜入力してソフトシンセサイザー音源から作り出した伴奏と市販の伴奏CDからCDを作成する。念のため2枚作るのが神経質らしいところである。そして事前に当日使用する作業療法室のCDラジカセにかけて音飛びがないかチェックしておく。万一のための予備弦も用意する。

 昼休みに一通りCDを流して再度チェックし、軽く練習しておく。カード型の小さなリモコンで操作する。さて、本番。例によって多少のミスは出るが、大きな崩れはなく、何とか最初の3曲を弾ききる。歌は3曲とも文部省唱歌の名曲。いずれも「ふるさと」「もみじ」と同じ作詞者・作曲者によるものである。「春が来た」と「春の小川」の歌詞は口語体に書き換えられているが、「おぼろ月夜」は美しい文語体のままである。みな一生懸命歌ってくれた。さて、最後の演奏のところでトラブル発生。事前のチェック時には問題なかったのに、突然にCDが読めなくなった。2、3分間中断して予備CDをかけたところ無事にかかってホッとする。予備のCDを作っておいて本当に助かった。「卒業写真」の演奏では、昔を思い出したのか、涙を流している人もいた。ド素人の演奏ながらヴァイオリンは視覚的な効果もあるので喜んでもらえたようだ。

 御褒美に草餅と桜餅をいただいた。良い香りである。私の口にも春が来た。

2014年3月12日 (水)

神経質礼賛 1004.注文の多い料理店(2)・・・森田療法の「治る」とは

 京都森田療法研究所ホームページの「研究ノート」に掲載された、いわば「注文の多い料理店で読み解く森田療法」を993話に紹介させていただいた。今回はそれに少し補足しておきたい。宮沢賢治の『注文の多い料理店』では、都会の若者たちは山猫の化物に食べられそうになる寸前で死んだと思っていた猟犬が飛び込んできて助けられ、あやかしの料理店は消え、元通りの「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました」という現実の自然の中に寒さに震えながら立つのである。

 遠方から森田療法を希望して来られる方の中には、入院したら症状がきれいさっぱりなくなって頭の中がスッキリと青空のように冴えわたることを期待する方がしばしばいる。ことにカリスマ的な治療者がいる場合はその傾向は強くなるだろう。もちろん、入院中に「頓悟」と言えるような状態になる方もいないわけではないけれども、大半の人たちは症状はありながらも行動する習慣ができたところで退院していくものである。「本当の勝負は退院してからですよ」「何気ない日常生活が勝負どころですよ」、と退院する方々には話している。現実の生活をしていく中で不安は決してなくなることはない。だから、「症状」も何かの拍子にまた顔を出すことがあるだろう。しかし、仮に症状が出ても、それを相手にせずに仕方なしに目の前の仕事を淡々とこなしていれば、症状はいつしか過ぎ去っていく。そういう習慣が身についていれば本物であり、森田療法の「治った」なのである。入院治療を受けていても、いつかは退院の時が来る。自分を治してくれる都合のよい存在として期待していた治療者や病院は「注文の多い料理店」と同様に目の前から消えて、一人で現実の中に不安に震えながら立たなくてはならない。そして、時には症状がぶり返して苦しみながらも行動しているうちに、ようやく治っていくのである。

2014年3月10日 (月)

神経質礼賛 1003.はるみ

 先週末からまた寒さが戻ってきた。通勤途中に雪が降ってきた日もあってちょっと心配になったが、そのうち晴れてきて積もることはなかった。それでも着実に春はやってくる。朝、新聞を取りにポストのダイヤル錠を開ける時に暗くて門灯を点けていたのが、この頃は点けなくても見えるようになってきた。近所の公園ではアンズの花が咲き始めている。そして、天気予報のスギ花粉情報は連日「非常に多い」。ありがたくない春・・・花粉症も「鼻」盛りになってきた。

 休日にデパートへ行ってホワイトデーのお菓子を買う。帰りに近くの広場を通ると産直市をやっていた。農家の人たちが自分のところで獲れた野菜・果物・お茶・しいたけ、そして手作りの餅やきんつばなどを売っている。よもぎ餅がおいしそうだ。ついつい立ち止まって見てしまう。春らしい名前の「はるみ」というみかんを買ってみた。小粒のものが10個で200円だった。はるみは清見(きよみ)とポンカンの一種を掛け合わせてできた品種なのだそうだ。清見は名前の通り、清見寺(せいけんじ)がある興津で作られた品種であり、温州ミカンとオレンジの一種と掛け合わせたもので、さらに他の品種と掛け合わせた多くの新種のみかんが栽培されているという。おいしい創意工夫はとても結構なことである。家に帰って食べてみる。ほどよい甘みと爽やかな酸味があり、ポンカンよりもみずみずしい食感である。おいしい春、見つけた。

2014年3月 7日 (金)

神経質礼賛 1002.ストーカーの心理

 国内のニュースを見ていると、月に一度はストーカー殺人のニュースが報じられている。ああ、またかとうんざりする。ほとんどが、女性から振られた男性が女性につきまとい元恋人や元妻をついには刺し殺す、という同じパターンである。そんなことをするくらいなら、迷惑をかけずに自分が死ねばいいじゃないか、と思われるかもしれないが、そうはいかないのがストーカーの心理である。222日の毎日新聞第14面に掲載された仏文学者・鹿島茂さんのコラム「引用句辞典」にその心理が解説されていた。「愛の関係が破綻すると憎しみがパワーアップ」という見出しのこの記事では、精神分析のフロイトの『自我論集』を引用してその心理機制を解説している。

 ナルシシズム段階(乳幼児レベル)では外界のすべてが不快なもので憎しみの対象になりうる。それが性欲動が現れる段階(思春期以降)になると、性欲動にとって快と判断されるものは愛されるようになり、憎しみの対象から一時的に除外される。しかし、憎しみはより根源的なものだから消えていない。だから、「愛」が消滅すると憎しみはパワーアップして戻ってくる、ということである。鹿島さんは、現代社会ではナルシシズム固着の人間が多くなっていて、ストーカー殺人が増えるのも当然であり、対策は自己愛型の人間を避けるしかない、と結論しておられる。

 昔はストーカーがいなかったというわけではないだろう。歌劇「カルメン」のストーリー・・・ドン・ホセは職業も婚約者もすべて捨ててカルメンを追い求めたがカルメンはすでに闘牛士に心を移しており復縁を迫るが拒否されて刺殺する・・・はストーカー殺人そのものである。おそらく似たような事件が実際にいくつもあったのだろう。しかしながら、鹿島さんの言われるように、現代社会が自己愛型の人間を増やしているのは確かなような気がする。そして、携帯やスマートホンといった便利道具が必ず重要な脇役として存在するのが現代のストーカー事件の共通点である。

 神経質にもナルシシズムは潜んでいる。特に対人恐怖にみられる自我の強力性と弱力性は精神分析の研究者からみれば、自己愛(ナルシシズム)と自虐愛(マゾヒズム)ということになる(587)。ただ、神経質の場合、振られたら怒りよりもまず凹んでしまい「自分はダメ人間だ」と思いこみ、自分の情けなさを責めて身を引くことになるので、本来はストーカーにはなりにくいと思われる。しかし、「社会不安障害にはSSRI」と製薬会社が喧伝するように不安を軽減するためにSSRIのような抗うつ薬を服用して弱力性を軽減させたのでは自己愛だけが残って「困った人」になりかねないので注意が必要である。

2014年3月 3日 (月)

神経質礼賛 1001.一日一食の是非

 外来通院中の患者さんで一日一食しか食べないと言う人が数人いる。ある患者さんは、激務のためにうつ病になり、仕事ができなくなって退職してしまった。妻子を連れて実家に戻ったので、それまで通院していたクリニックから私の勤務先の病院に通院するようになった。やがて症状は改善し、薬を漸減。地元の企業で1年ほどパート勤務をしたところ、前の会社の上司からまた働いてくれないかと声がかかり、再び前の会社の正社員となって実家から通勤可能な部署に勤務することになった。くれぐれも無理はしないようにと注意しているが、今のところ順調である。ただ、この人は若い頃からずっと一日一食なのだそうである。本人は「長年そうだったし、朝は食べれないので」と言う。一日一食でも体重は標準体重を大きく超えている。よくいる朝食抜きの学生さんは低血糖のためにヤル気が出なかったりイライラして勉強に集中できなかったりしやすいという話をして、菓子パン1個や菓子1個あるいはバナナ1本でもいいから少しでも朝は何か食べるようにと勧めて、今ではそのようにしてもらっている。

 日本人は古くは一日二食だった。いつから一日三食となったのかについては諸説あってハッキリしない。ただし一日二食ではあっても武士や肉体労働者は間食を摂って三食とか四食のことがあった。古代は照明がなく就寝時刻も早いかったし、玄米食や雑穀中心だと白米に比べて消化に時間がかかって二食でも「腹持ち」がしたこともあるだろう。今でも禅寺の修行僧は一日二食しかも一汁一菜の極めて低カロリー低脂肪食である。修行に入ると最初は飢餓感に苦しみ体重が激減することになる。しかし、だんだん体が順応してくるし、長時間座禅を組む禁欲生活には適した食事なのかもしれない。もっとも一人前の僧侶になると中には肉魚や般若湯(酒)を召し上がってメタボになってしまう人もいる。

一日一食のTVドクターもいるようだ。しかし、低カロリー低脂肪の一日一食は修行僧以上に難しい。どうしても一食に多くのカロリーが集中することになって血糖値の日内変動が極めて大きくなる。年単位では大きな問題はないだろうが、もっと長期的な10年単位で考えるとインスリンなどを分泌して血糖値の調整を行う膵臓に大きな負担をかけて、糖尿病になるリスクが高くなるのではないかと心配である。また、食後高血糖は血管に障害をきたすリスクを高める。一食で一日分のカロリーをまとめて摂ったのでは食後の血糖値が一気に上昇して、心血管系の疾患にかかるリスクを高める可能性があると思う。やはり一日一食は避けた方が無難である。

 健康の基本は規則正しい生活、特に食事と睡眠にある。普通の仕事や学業についている人であれば、できれば一日三食、栄養のバランスを考えて食べていくのが望ましい。ちなみに食事もまず野菜類を食べてから肉魚類そしてパン・御飯を食べた方が食後の急激な血糖値上昇を抑えられるそうである。洋食でも和食でもコース料理でそのような順番で食事が出てくるのは理にかなっているのである。

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