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2014年6月23日 (月)

神経質礼賛 1038.病といへば薬

 入院中の患者さんから「物忘れがひどいから物忘れの薬を出して下さい」と頼まれる。この人は入院前には不眠・頭痛・肩こりなどを訴えてあちこちの医療機関から睡眠薬や抗不安薬や筋弛緩剤を処方してもらい、薬物依存傾向がある。入院してから薬を減量・整理して、ようやく安定してきたところである。念のため、よく認知症の検査に用いる「改定長谷川式スケール」をやってみると30点満点の29点(20点以下は認知症の疑いあり)であり全く問題ない。「検査結果は問題ありません。自分で物忘れを気にするうちは大丈夫ですよ。それと、睡眠薬や抗不安薬を服用していると、物忘れが出やすくなります。これからだんだんに減らしていけば今よりもよくなる可能性がありますよ」と答える。

 この人のように、症状ごとに薬を求めていったら、かえって害になることもある。森田正馬先生は著書『生の欲望』の中で次のように述べている。

 「病といへば」薬といふ事は、古来よりの習慣に捕はれた謬想である。病の治療といふ事には、多くの場合、薬は単に医療の補助とするのみである。服薬を必要としない又は其有害な場合は甚だ多い。(中略)今日「病といへば薬」といふ病人と医者との関係から、多くの患者が徒に無用の薬を吞まされて居るといふ事は、既に心ある人々はよく知って居るべき筈である。総てこんな関係から受くる損害は、患者自身の頭の上に降りかゝつて来るのである。(白揚社:森田正馬全集 第7巻p.203

 もちろん、薬物療法が重要である疾患もあるけれども、森田先生の言われたことは現代にも通じることなのではないだろうか。薬が増えれば、副作用が増え、薬同士の相互作用も問題になる。あちこちの医療機関にかかっていると正反対の作用の薬が出ていることさえある。多剤を服用している患者さんの場合、症状ごとに薬を足し算していくのではなく、必要性の低い薬は中止していく薬の引き算(866)も考えることが大切だと思う。

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