神経質礼賛 1031.根
以前にどこかで書いた記憶がある、我が家に生えてきた「この木何の木」。3年ほど前、隣家との境のブロック塀と玄関横の50cmほどの隙間に双葉が出てきた。雑草ではなさそうなのでそのままにしていた。多分、鳥が落としていった種が発芽したのだろう。だんだん大きくなり、椿の葉のような濃い緑色の葉が増えた。葉は蟻の好物らしく、よく蟻が集まってくる。後からもう1本、同じような木が生えてきた。こちらは生長が早く、ずんずん伸びていった。どちらも花を付けない。鳥が種を運んで椿やサザンカが生えることはないとのことで、モチノキの雄株ではないかと思われるが、いまだにハッキリしない。後から出てきた木の生長が早いのは、ちょうど雨どいの水が流れ出てくるあたりで、土の水分が豊富なためかと思われる。時々、長過ぎる枝を切ってはいたが、ついに高さ3m近くなり、枝がブロック塀を超えて隣家に侵入していくし、雨どいを押すような枝もあって、これはまずい。ついに切ることにした。まず、枝を少しずつ切り落とし、地上50cm位のところで幹を切った。幹の太さは5cm近かった。そして、根本周囲の地面を掘り、残った幹を力いっぱい引っ張ってみたけれどもびくともしない。さらに地面を掘って引っ張ってもダメである。あきらめて地面のところで幹を切り、また土をかけておいた。雑草は根がしっかりしていて強いが、雑木もまたしかりである。
人間の本性、性格の根本を根と言うことがある。「根は正直者」とか「根は明るい」というような使われ方をする。一頃「ネアカ」と「ネクラ」という言葉が流行ったけれども、植物の根と同様、人間の性格の根本も見えにくいものである。その人の言動や行動、態度や表情から判断するしかない。根は神経質で小心者であっても、大きな声であいさつし、笑顔で人と接すれば「明るい人」と思われる。かつて、メンタルヘルス岡本記念財団理事長の岡本常男さんは御自身の体験をもとに、「森田療法で性格が変わる」という講演をされていた。森田療法を勉強してそれを実践したところ、胃腸神経症がすっかり治ったばかりか、性格も明るくなり、部下から見ても親しみやすく話しやすくなった、ということである。岡本さんは、感情はそのままでプラスの行動を重ねることを勧めておられた。もちろん、性格の根本が変わるわけではないが、行動は変えることができる。神経質という立派な根を生かして、心配性のままに枝を伸ばしていけばよいのである。
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