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2014年7月21日 (月)

神経質礼賛 1048.大いなる喜びへの賛歌

 昨夜、TVのチャンネルをNHK Eテレに変えたら、ちょうどマーラー作曲交響曲第4番ト長調が始まるところだった。胸ポケットに真っ赤なチーフを付けた指揮者の広上淳一さんは終始ニコニコしながら派手な動きをする。それにつられてか、まるで「のだめカンタービレ」のようにクラリネット奏者たちは楽器を高々と上げて楽しげに演奏する。対照的に、オーボエの茂木大輔さんはクールである。コンサートマスターの篠崎さんの前には第2楽章のソロを弾くために長2度高く調弦された別のヴァイオリンが立てかけられている。第4楽章に登場した新進のソプラノ歌手も見事な歌いっぷりだ。見ていて実に面白い演奏で、最初から知っていればビデオに撮ったのにと思った。

 この曲には「大いなる喜びへの賛歌」という標題がある。これは作曲者自身が付けたのではなく、第4楽章の「天上の生活」の歌詞の内容から後に付けられたものだという。マーラーの曲には死の不安を感じさせるものが少なくない中、この曲は明るさを感じさせるものの、結局は天上の楽しさとは死後の世界なのである。マーラーが交響曲第9番を作ると死ぬというジンクスを極度に恐れてそれを回避しようとしたことや、妻アルマの男性関係に悩み、強迫神経症が悪化して、精神分析の創始者フロイトに助けを求めたことは以前書いた通りである(402話・607話)。村井翔著「マーラー」(音楽之友社)によれば、こころの中を覗かれる不安から2回予約をキャンセルし、3回目でようやく会ったのだそうである。診察室で会ったのではなく、街を散策しながら「精神分析的な会話」だったとのことだ。フロイトは「母親への固着」を指摘した。マーラーは病気がちの母のイメージをアルマに重ね、無意識のうちに同じ苦しみを妻にも要求し、妻アルマも「父親への固着」があると指摘した。アルマの父親は風景画家だったがアルマ13歳の時に腸閉塞で急死して、母親が父親の弟子と再婚している。「父親のようなタイプの男性」を求めて20歳近く年上のマーラー(発音は画家という意味のMahlerと同じ)と結婚した、と解釈したという。フロイトはマーラーの症状の原因を幼児期の体験に求め、エディプス・コンプレックス論を適用し、それをマーラー自身が洞察することで症状は改善したようである。

 好きな曲には個人的な思い出があるものだ。私がこの曲を初めて知ったのは、最初に入った大学のオーケストラの練習を見学した時のことである。ちょうどこの曲の第2楽章を練習していた。上級生から、いい(高い)楽器を買って先生につかないと舞台に乗れない、毎年ヨーロッパに演奏旅行に行く費用も用意するように、と言われて、自分は経済的にとても無理だと思った。入団費は払ったけれども、その後、二度と行くことはなかった。希望の大学には落ち、オーケストラにも参加できなかった、青春の日のみじめな挫折の思いと重なる曲だけれども、それでもマーラーの曲の中では一番好きな曲でよく聴いている。私にとってこの曲は、徳川家康の「しかみ像」(209話)のような存在なのかもしれない。

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