神経質礼賛 1051.血液型と性格は無関係
7月28日読売新聞夕刊に血液型と性格との関連性に科学的根拠はないという研究結果が紹介されていた。九州大学の縄田講師(社会心理学)が日米1万人を調査した研究結果で、68項目の質問に対する回答で血液型による差が出たのは3項目のみで、しかもその差はごくわずかだったという。
こんなことが研究対象になり、新聞記事に取り上げられるのは日本だけである。海外諸国で血液型を気にするところは皆無である。国内では1970年代から血液型と性格との関連を書いた書籍が売れるようになり、テレビ番組の話題になるようになったという。「A型は真面目」とか「B型は自己中心的」などと言われるようになり、就職活動の面接の際に血液型を聞かれたり、極端な場合には特定の血液型だけを採用する企業があったり、と時には不当な差別にまで発展している。
血液型と性格が日本で言われるようになったのは実は古く、以前71話に書いたように大正時代からのようである。森田正馬先生はそれを迷信であるとし、弟子の古閑義之先生が血液型と性格の関係を否定する論文を書いている。
古川文学士の「血液型と氣質」の研究は、今は大分、長い年月を経て、最近は之に対して、多くの価値を認めず、両者の間に、一定の関係を認めない・といふ学者も出るやうになッた。根が抽象的分類であるから、一歩誤れば、無意味の研究になり易い・といふ事を忘れてはならない(古閑「氣質と性格の研究」『応用心理』第二巻・第三号参照)。
更に此の血液型と・スポーツ・軍人・大学生・優等生・耳鼻科疾病・禿頭と白髪等との関係を研究するに至りては、之を瓢箪や・印籠を集める人に相当する処の・学問的道楽と思へばよからうと思ふ。もし一歩脱線して、縁談・運命・失職等の関係を研究するやうになれば、初めて誰でも、之を迷信と氣がつくであらう。(白揚社:森田正馬全集第3巻p.382)
日本人の場合大ざっぱに言えば、A型4割、O型3割、B型2割、AB型1割という比率なので、どうしても少数派のB型やAB型は変人扱いをされやすい。学校で自分の血液型を教えられると、友人と教え合うから、少数派は肩身が狭い思いをすることになる。今では急病や大けがの際に、本人や家族から申告された血液型をいきなり輸血することはなく、必ず交差適合試験(クロスマッチテスト)を行ってから輸血するので、自分の血液型を知っている必要性は必ずしもない。Rh(-)型の人は少ない(日本人では約0.5%と言われている)ので、いざという時に輸血が得られにくいことを知っておく必要性があるけれども、ABO型については知らなくても良いのではないかと思う。血液型で性格がわかるくらいなら性格検査はいらなくなる。しかし、精神科の診断で血液型を問うことはない。よくA型は神経質と言われ、森田正馬先生もA型だったが、神経質が足りないA型の人も少なくないし、非常に神経質なB型の人もいる。占いと同様に、当たると印象に残り、はずれても印象に残らないから、何となく当たっているような気がしてしまうだけのことである。
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