神経質礼賛 1088.福太郎
一昨日は午後から保健センターの精神保健相談の日だった。保健センターは伊豆箱根鉄道で3駅目を降りてすぐのところにある。天気が良かったので、行きは三島駅から歩くことにした。以前(949話)にも書いたように、桜川沿いの小道を「水辺の文学碑」を眺めながら歩いていくのは心地よい。三嶋大社の脇から境内に入り散策する。先週のニュースで枯葉を大きな竹箒で掃除している様子が流れていたが、木々の葉はもうかなり落ちてしまっていた。樹齢1200年の金木犀もすでに花が落ちた後だった。イチョウの葉は鮮やかな黄金色に輝いて青空に映えていた。
境内には縁起物「福太郎」の茶店がある。伊勢神宮の「赤福」と同様、こし餡が載った餅であるが、「赤福」が白い餅なのに対して「福太郎」はヨモギ餅である。また、「赤福」が全面に餡を載せているのに対し、「福太郎」は餡が烏帽子風の形をしていて(リーゼントみたいだという人もいるが)それに合わせて餡を載せやすいように餅の形も少々カブトムシ型とでも言おうか先を細くしてある。箱には黒い翁の能面のような絵が描かれている。三嶋大社のホームページによれば、1月7日の「お田打ち神事」の際に、白い面を付けた舅の穂長(ほなが)がその年の恵方から登場し、黒い面を付けた婿の福太郎とともに種まき、鳥追いなどの稲作行事を狂言風に舞うのだそうである。菓子の福太郎はそれにちなんだもので、邪気を払うヨモギ餅になっているという。昼食を食べたばかりながら、茶店に入って福太郎とお茶のセット(税込200円)を頼み、腰を下ろして食べる。ほどよい甘さの餡とヨモギの風味が口の中いっぱいに広がる。お茶をすすって一服するにはちょうどよい。
その日の相談は2件あって、1件目は50代の妻について夫からの相談、2件目は30代ひきこもりの子供の母親の相談で昨年にも一度話を伺った人だった。1件目は確認行為が激しく、夫にも確認行為を行わせる巻き込み型の強迫神経症(強迫性障害)と思われた。本人は勝手に連れてこられたと怒って駐車場で車の中に籠っているという。夫の話を聞いた後で、保健師さんと一緒に駐車場の車の所まで行って話しかけたら車から出てきてくれた。しかし保健センターには入りたくないというので立ち話である。20分ほど本人の話を聞いた。舅や姑のことでどれだけ苦労してきたか、そして夫への不満を一気に話し続けた。夫からは殴られたり蹴られたりして手足にあざができていると言って見せる。御本人に対しては、いろいろと気になって確認し過ぎて疲れてしまったりイライラして困ったりしている様子なので、精神科を受診することをお勧めした。それから夫の激しい暴力があるとしたらDVにあたるので、然るべき相談窓口を利用した方が良いとも話した。夫に対する巻き込みが激しくて、夫がうるさがって暴力に出ているように思われた。夫に対しても暴力をふるわないよう注意した。
夫婦間での問題はどちらか一方が悪いということは少なくてどちらにも原因があることが多い。お互いの欠点を批判し合っていたのではこじれるばかりであり、お互いに歩み寄らないと解決しない。相手の欠点には少々目をつぶり、十言いたいところを五か六くらいに我慢する必要があるだろう。森田正馬先生も患者さんたちがいるところで久亥夫人としばしば夫婦喧嘩をし、どちらが正しいか判定しろと言われて患者さんが困ったというような話もあるし、怒った森田先生が籍を抜いてしまったこともあったという。原因は森田先生のわがままによるところが多かったらしい。
腹が立つことがあっても、時にはおいしいお菓子でも食べて、福太郎の面のように笑顔でいたいものである。
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