神経質礼賛 1135.粛々(しゅくしゅく)と八紘一宇(はっこういちう)
病棟で仕事をしていたら、突然、看護師さんから「粛々ってどういう意味ですかねえ」と聞かれた。何となくわかっていても、普段は使わない言葉だから即答できなかった。沖縄の新基地建設に反対している県知事や地元住民の意思がどうあろうと、基地建設作業を続けていく、という官房長官や首相の発言の中で使われたものである。粛々を辞書で引くと、①つつしむさま。②静かにひっそりしたさま。③ひきしまったさま。④おごそかなさま。「葬列が-と進む」とある。実態はどれにも当てはまらない。「邪魔立てするな。問答無用、こっちが決めたようにやるだけだ」が本音なのだから。こういう美辞麗句を使いたがる割には意に沿わない野党の発言にヤジを飛ばすような、親の七光りお坊ちゃまが日本のトップでは情けない。
国会議員の八紘一宇発言も話題になっている。私は日本史の教科書でしか知らなかった言葉である。森田正馬先生の晩年の頃にタイムスリップしてしまった感がある。八紘一宇について、これまた辞書を引くと、「(「宇」は屋根の意)世界を一つの家とすること。太平洋戦争期、日本の海外進出を正当化するために用いた標語」とあり、日本書紀の中の言葉に基づくのだそうだ。
神経質人間としてはすでに戦争前夜になっているのではないかと心配になる。首相が「わが軍」を世界に派遣したがっている。だが、それは戦争に巻き込まれていく第一歩である。どうせ投票しても変わらない、と選挙で棄権している人が増えると、粛々と八紘一宇への道を進んでいくことになる。そして、いずれは徴兵制が敷かれ、若者たちが戦場へと駆り出され、血を流していくことになる。
軍国主義一色の時代に「生の欲望」「死の恐怖」を説いた森田先生は特高警察からマークされていたという話がある。元入院患者さんが軍人として出世していくことは喜んでおられたが、そもそも仲の良かった弟が日露戦争で招集されて旅順で戦死していることもあって戦争は嫌っておられた。戦争は馬鹿げているが時節を待つのだ、ということをお弟子さんに語ったとも伝えられている。
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コメント
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福島の原発事故が根本的に何も解決していないのに、国民が求めてもいない憲法改正(改悪)などを急ぐのは愚の骨頂にしか見えないのですが、大新聞は安倍自民を叩かないですね。


民主があまりにダメすぎて政権交代が期待できないと、安倍自民を必要以上に怖れて監視役のマスコミが批判を自粛してしまいます。
国から地方まで議員の無駄に多いのと高給には腹が立ちます
森田先生なら日本の現状をどうお考えでしょうか
投稿: たらふく | 2015年4月14日 (火) 00時02分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
マスコミのほとんどは現政権礼賛で本来の機能を放棄しています。大新聞で比較的まともなのは毎日新聞くらいのもの。現政権を陰でプロデュースしているのは読売新聞・産経新聞関係者のような気もします。財界と官僚の意のままです。政治資金問題や定数削減の話も闇に葬られています。無茶苦茶な金融緩和で株価を釣り上げてもいずれバブルは崩壊します。
ともかく、投票率が60%を割るようでは民主主義は終わっています。大震災直後は原発はいらない、と思っていた人々も、喉元過ぎれば何とやら。最後にツケが回ってくるは自分たちだと気づかないのは神経質が足りな過ぎます。
投稿: 四分休符 | 2015年4月14日 (火) 21時54分
先日、偶然国会中継を見ていたら、自民党の三原議員が八紘一宇という言葉を使っていたので大変驚きました。「えっ、まさか」と思ったのですが、その時の予算員会の野党議員は無言のままヤジも飛ばさず。これには驚きました。
今の日本の政治は、瀕死の状態というよりも死んでいるのも同然のような気がします。
官房長官はどんな酷い問題でも「問題ない」を連発し、まるで知性が感じられません。
首相はそれ以上に酷い状態であることは言うまでもありません。
今やこれの人々は、本来の「保守」ではなく、かなり偏った政治思想を持っていると思わざるを得ません。
それでも、官制相場で株価が上がっていることから、国民は「いつかは自分も利益の恩恵にあずかれるのではないか」という淡い期待感の元、支持率はさほど落ちない。
これはもう思考停止の状態です。
テレビや新聞などのマスコミも国民を啓蒙しないし、国民も一過性の利益にあずかれるのではないかという悪しき欲望によって思考を停止しています。
こんな異常な状態はないのではないかと思うのですが、森田先生の言葉を借りると、「時節を待つ」以外にないのかもしれません。
投稿: スローライフ | 2015年4月15日 (水) 21時58分
スローライフ様
コメントいただきありがとうございます。
強迫的な人間なので(笑)、更新されてもされなくても、必ず毎日スローライフ様のブログは拝見しています。美しい写真を拝見すると、ほっと気が休まる感じがします。
仰ること、全く同感です。このままでは、5年もかからずに憲法改変→徴兵制が可能になってしまいます。「自分には関係ない」「どうせ誰がやっても変わらない」ではなく、選挙で棄権せずに投票して五分の魂を示すのが破局へ転がり落ちるのを防ぐ唯一の手段ではなかろうかと思います。
投稿: 四分休符 | 2015年4月15日 (水) 23時20分