神経質礼賛 1151.『家康 その一言』出版
昨年夏、突然、静岡県文化財団から原稿依頼の話が舞い込んだ。同財団では「しずおかの文化新書」という本を年4冊出版している。家康公四百年祭に向けて本を出したいが、ありきたりの歴史学者の本では面白味がないから、違った視点から見た家康像にしたい、ということで私に白羽の矢が立った。地元放送局のカルチャー教室などで俳句の師匠をしておられ、同財団の新書に寄稿している鈴木啓造さんが八木洋行編集長に私を推挙して下さったためである。家康についてはブログでも何度か書き、拙著『神経質礼賛』にも書いてあるが、ほぼ1冊分の原稿を書くのは少々しんどい。毎週図書館通いをして多くの文献を読み漁り、ようやく昨年末に原稿をほぼ書き上げた。年が明けてから修正要請に沿って手直しをし、4月に校正完了。5月末に発売にこぎつけた。従来、衣冠束帯姿の堂々とした肖像画や「鳴くまで待とうほととぎす」のイメージが強い家康だが、本当は神経質性格であり、小心で心配性な面を持ち合わせていた。その神経質性格を活かして無謀な戦いは避けて粘り強くピンチを切り抜けて着々とポイントを上げ、民政にも気を配り、戦国の世から平和の世を築き上げる大事業を成し遂げて生き尽した一生だったのだ、という流れになっている。神経症と森田療法についても簡単に説明を入れた「隠れ森田本」でもある。この本は県内の学校や図書館にも配布されるので、神経質な性格に悩んでいる方々や神経症に苦しんでいる方々の目に留まり、あの家康公も神経質だったのだ、大いにあやかろう、と神経質を覚醒させて発揮することになってくれれば、こんなにうれしいことはない。
さてやれやれ、とほっとしていたら、文化財団から連絡があり、今度は出版に伴う文化講演会もあるとのこと。さあ大変、プレッシャー大、ドキドキハラハラである。お恥ずかしい限りだが、あわてて準備を始めている。
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四分先生、ご出版おめでとうございます。
森田療法は後世に残すべき人類の知恵です。
四分先生の営みは尊いです
まだアマゾン等では出ていないようですが
わたくしも急ぎGetして味読させて頂きます。
投稿: たらふく | 2015年6月 1日 (月) 23時09分
先生、アマゾン見直しましたら出てました
即注文いたしました
投稿: たらふく | 2015年6月 1日 (月) 23時12分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。また、早速ご注文いただきありがとうございます。
1日(月)の昼休みに編集部からメールがあり、「早くもアマゾンの方から3冊注文が入りました!」とのことでした。ワンコイン+αで買える薄い新書ですので、お買い求めいただきやすいかと思います。
私の手元にはサンプル本しかないので、お世話になった方々や知人に贈呈する分としてとりあえず50冊を注文しました。
今回は原稿料をいただいて、在庫を抱え込まずに済むので、大変ありがたいです。
投稿: 四分休符 | 2015年6月 2日 (火) 01時12分
先生、御出版おめでとうございます。
今朝、編集長が本を届けてくれました。
立派なものができましたね!!凄い!!!
編集長の前がきにもあったように、
家康没後400年を記念して、
地元出身の気鋭の精神科医が、
「神経質」を切り口に家康を論じたことは、
画期的なことであったと思います。
全国的なブレイクの気配を感じますね!
まだ、部分的にしか拝見してないのですが、
達意、平明な文章で、大変読みやすく、
家康論も名著として広く読まれるでしょう。
この企画の最初の部分で、ちょっぴりかかわれたこと、
みんなに自慢しようと思いますが
お許しください(汗)。
投稿: keizo | 2015年6月 4日 (木) 04時02分
keizo様
今回の出版が実現したのはkeizo様のおかげだと言っても決して過言ではありません。本当にありがとうございます。また、掲示板「日々の賀状」で御紹介いただき感謝しております。
家康に関しては当ブログで何度も取り上げてきましたけれど、原稿を書くに当たり多くの文献を読み、ますます家康が神経質を活かした人だったのだ、という思いを深くしています。
投稿: 四分休符 | 2015年6月 4日 (木) 18時41分
『家康 その一言』のご出版、おめでとうございます!読ませて頂きました。家康については、先生のブログを通して、その神経質性格に興味を感じてきましたが、波乱多き一生を通じて様々な場面での行動、言葉、危機に遭ってぎりぎりの局面での選択に関し、歴史的事実・逸話を取り上げながら、先生独自のご考察を加えられた御著書は、より深くくっきりと家康の性格を描き出し、読み応え十分、大変おもしろいです。
なかでも、「築山殿殺害・信康切腹の謎」は感動的でした。戦国の世だから仕方がないのかとは思いつつ、自分の奥さんと息子の殺害・切腹を命じた家康に冷え冷えとしたものを感じておりましたが、家康の内心、辛抱、悲憤を知れば、我が胸も痛みます。
家康は、その内なる「強力性」と「弱力性」の相克の苦痛に耐え、その人生を前進・発展させた人なのでしょうか。
先生、「神経質に悩む人の役にたちたい」というお気持ちで書かれているこのブログが、こんなすばらしい形で発展して、本当によかったですね。すでにこんなに勉強しているのだから、文化講演会もきっと大丈夫です。
母が「これ、お前の本?読みたい。」とのことなので、貸してあげます。よい日曜日をお過ごし下さい。
投稿: nonboo | 2015年6月20日 (土) 17時18分
nonboo様
コメントいただきありがとうございます。また、過分な御評価をいただき恐縮です。
「狸親爺」の悪役として語られやすく信長や秀吉に比べると「華」が少ない家康ではありますが、常に周囲の人々が幸せになれるように気を配って行動してきた点、反省することを忘れず自らを厳しく律してきた点、を考えますと、取っ付きは悪いけれども本当は心優しい人であり、磨き抜かれた神経質だったのだと思います。あやかりたいものです。
本を買って下さった方から「何か書いてください」と言われて
「あるがまま」 家康公に あやからむ
と書いています。
投稿: 四分休符 | 2015年6月20日 (土) 22時11分