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2015年9月 4日 (金)

神経質礼賛 1181.過剰診断・過剰薬物

 8月下旬の読売新聞のコラム「医療ルネサンス」に独協医大越谷病院教授の井原裕先生の記事が出ていた。井原先生については当ブログでも「双極性障害と疾患喧伝」(745話)で紹介している。米国精神医学会による精神疾患の診断基準DSMが1994年に改訂されてDSM-Ⅳとなった時点で双極Ⅱ型障害という病名が登場した。従来の典型的な躁うつ病に比べると大きく診断の幅が広がった。さらなる改訂版のDSM-5にも引き継がれている。そして、製薬会社が新型抗精神病薬や新型抗てんかん薬の気分安定作用に着目して双極性障害への適応を取得すると、盛んな疾患喧伝が繰り広げられるようになった。その結果、安易な過剰診断が行われて薬物療法が行われ、副作用のためにかえって状態を悪くしてしまうという問題も起きているという現状がある。

 井原先生は「寝不足で元気が出なかったり、感情の起伏が激しくなったりするのは自然な反応で、それを病気だと騒ぐ医者こそが問題だ」と批判し、患者さんには規則正しい生活リズムを送るよう指導して、不要な薬は少しずつ減薬していく、といった治療を行っておられる。軽度の気分の浮き沈みは誰でもあるし、冠婚葬祭や生活上の大きな変化がある時には大きな気分変動があっておかしくない。気分が落ち込んで食欲が落ちて体重が激減して仕事にならないとか、気分が高揚して浪費に走ったり周囲の人とのトラブルが多発したりしているとかいうのだったら薬物療法は必要だが、程度が軽いのであれば、安易に病名のレッテルを貼って薬を処方するのはいただけない。まして、神経症の治療にむやみに薬を処方するのは害の方が大きい。そういうことにムダな医療費を浪費するのも問題である。

 以前にも紹介した通り森田正馬先生は、次のように言っておられる。

 「病といへば薬」といふ事は、古来よりの習慣に捕はれた謬想である。病の治療といふ事には、多くの場合、薬は単に医療の補助とするのみである。服薬を必要としない又は其有害な場合は甚だ多い。(中略)今日「病といへば薬」といふ病人と医者との関係から、多くの患者が徒に無用の薬を吞まされて居るといふ事は、既に心ある人々はよく知って居るべき筈である。総てこんな関係から受くる損害は、患者自身の頭の上に降りかゝつて来るのである。(白揚社:森田正馬全集 第7巻p.203

 医療に携わる者は肝に銘じるべき言葉だと思う。

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コメント

 745話も併せて拝読しました。怖いものですね。近年、医療費膨張が深刻な社会問題になっていますが、厚労省はそのような製薬会社の姿勢を問題視することはないものなのかなあ、と思います。私たち、被保険者には、あなたの医療費はこれくらいかかりました、ジェネリックに変えれば薬代がこれだけ削減されます、といった通知がよく来るのですが。
 医療界の変化や企業のマーケティング戦略に流される風潮がある中、四分休符先生や井原先生、私がむかしお世話になった森田療法の先生、森田正馬先生のように、良識を持って診て下さるお医者様に出会えた患者は幸いです。

nonboo様

 コメントいただきありがとうございます。

 精神疾患に限らず、診断基準を拡大して病気の範囲を広げるような流れがあります。そのウラでは、製薬会社が影響力の大きい大学教授たちに高額な講演料を払って医師向けの講演会を行うようなことがあります。最近はやっとそうした情報がある程度公開されるようになってきたところです。
 森田療法は製薬会社の天敵です(笑)。

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