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2015年9月19日 (土)

神経質礼賛 1187.変わった性格の人とうまくやっていくには

 前話に関連して、形外会高知支部での座談会(昭和9年11月5日)の記録から、森田先生が、性格の合わない人にどう対処したらよいか、ということについて語られた部分を引用してみよう。


(変わった性格の人とどうして一緒にやって行かれるか、というある女性からの質問に対して)

 それはなんでもない。思う通り自由にできる事です。私のやり方は、何かにつけて、すべて「感じから出発する」「自然に服従する」という事を会得すればよいのです。(中略)

 それで我々は、人と交際する時に、それが性格が違おうがなんであろうが、自分の直接の感じのままに、好きは好き・面憎いは面憎いで、そのままに交際していけばよい。嫌いだからといって、かならずしも「私は貴方が面憎いから、お断りしておきます」とか、いちいち挨拶をする必要もない。当たらず触わらず、会釈笑いでもしていればよい。この会釈笑いというものは、我々が人に対する社交的の自然の反応であって、自分の心に不快があっても、人と応対すれば、これを隠そうとして、かえって著明に現れる事があるという事は、誰でも自覚し得る事であろう。その自然のままでよいのである。

 それで、面憎いままに、じっと自分の心を持ちこたえている事を、私は「自然の感じのままに服従する」と称します。しかし相手は、同窓生であるから、挨拶くらいはしておいた方がよかろうと考えて、お世辞の一つもいうのを、私は「境遇に柔順」と称するのであります。たったそれだけでよろしい。

 この際に、自分は「人を憎んではならない」「人は愛であれ」「敵を愛せよ」とか、いろいろの教訓を引き合いに出して、我と我心を撓め(ため:「矯め」の意)直そうと反抗するのを、私は「自然の感情に服従しない」と称する。

 これと同時に、自分はあの憎らしいのが、不愉快だから、彼に会う所へは行かないとか、話しかけられても、応対もしないとかいえば、それはわがままであり、「境遇に柔順でない」と称するのである。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 P568-570


 森田先生の言われるように「私は貴方が嫌いだ」と白黒ハッキリつけたくなるのが神経質の心理である。そして、神経質の「負けじ魂の意地張り根性」ゆえ、ついそれを態度に表してしまう。私は今でも反省することがあるし、若い頃はそれが顕著であって孤立しがちだった。しかし、それでは社会の中で生きていく上で自分にとって不利益になる。例えば、嫌な人に仕事の上で助けられることもあるし、好きな人から足を引っ張られることだってあるのだ。嫌いな人から話しかけられて返事もしないとか、同席しないとかいうのは子供じみた「わがまま」ということになる。好き嫌いの感情はそのままにして、嫌いな人であっても挨拶をし、会釈笑いを浮かべ、状況によってはお世辞の一つも言うのが、大人としての態度であり、境遇に柔順ということになる。

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コメント

こんな処世上のタメになるお話は教科書に載せるか
全国の朝礼で紹介して欲しいですね
神経質でない人でも、経験や知恵の浅さから
無理・無駄な葛藤を続け、せっかくのチャンスを
棒に振ったり、自滅することが多いと思いますので。

たらふく様

 コメントいただきありがとうございます。

 森田先生が81年も前に話されたことですが、現代にも全く色あせずにそのまま通用することだと思います。そして仰るように神経質であるなしにかかわらず役に立つお話でもあります。

 現在の写真はあけび・・でしょうか?お話はもちろん、私は先生の写真も楽しみにしています。季節を感じたり、きれいだったり、滑稽だったり、お散歩の楽しい一齣だったり~いつも笑顔を誘われます。私は機械類は超がつくほど苦手なのですが、先生の写真に触発されて、(買い替えたばかりの)携帯のカメラ機能の使い方をちょっと頑張って覚え、先日の吟行の際、惹かれた景色等を撮ってきました。でも、あまり良く撮れませんでした。今後はもう少し上手くなって、句友へメールに添付して送ろう!と計画しています。いつも喜んで送り出してくれる家族にも見せます。
 私も人付き合いが下手で、思い出すと恥ずかしくなることも多いです。その失敗の経験から言うのですが、特に職場においては、先生が仰るような理由で「境遇に従順」の態度がいいですね。嫌いという感情はそのままに、損得勘定を働かせて得な行動をしたらいいと思うのです。1186話のA氏のように有能な人はなお更です。持てる力を発揮できる環境をつくっていかないと勿体無いから。また、正社員として雇用されることの有難みに気付いて、と願います。

nonboo様

 コメントいただきありがとうございます。

 大当たりです(笑)。三島駅南口タクシー乗場に小さな屋根がありまして、そこにあけびが植えられています。夏には緑色の実が生り、だんだん大きくなって、晩秋には赤く色づいてきます。緑が少ない街中でも、ちょっと注意すれば、季節の変化が楽しめます。
 いつもデジカメを持つのは大変ですが、ケータイのカメラを活用すれば、気に入った光景を記録に残すことができます。nonboo様のことですから、きっと腕を上げられることと思います。
 828話で渡辺和子さんの「置かれた場所で咲きなさい」について触れましたが、人も植物と同じように、意外と自由が利かないものです。いろいろなしがらみの中で、精一杯、生き抜いていく・生き尽くす他ないのだなあ、と歳を重ねるたびに思います。
 

 

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