神経質礼賛 1182.ひっつき虫
草取りをしている時に、ふと、近頃は「ひっつき虫」を見かけなくなったなあ、と思う。「ひっつき虫」と呼ばれる植物の種は子供の頃にはよくあって、友達同士で投げあったものだ。小学校への登校には「薩摩土手」と呼ばれる土手を歩いていた。家康の命で安倍川の治水のために薩摩藩が造った土手である。今では石碑が建てられて綺麗に整備されているが、当時は土手の両側は草むらで、横に小川が流れていたから、子供たちにとっては絶好の遊び場だった。遊んでから家に帰ると衣服に「ひっつき虫」がくっついていることに気付くことが多かった。ここで入手した「ひっつき虫」を学校で投げ合って遊んだりもした。一番上等な「ひっつき虫」は多分オナモミという植物の種で、長さ1-1.5cm位の楕円形をしていた。小さなトゲトゲが一面についていて、それで衣服にひっつくのである。これは日が経っても茶色く変色するものの崩れることはない。ただし、これを入手できることは少なかった。草むらで衣服にくっつくヌスビトハギは小さくて平たいので、投げるのには適さず、遊びには使えなかった。センダングサ(たぶん外来種のアメリカセンダングサ)は、花が咲いた後に緑色のミニプラグ状の形の実になって、これはオナモミ以上にどこでも手に入り、よく投げるのに用いた。後ろからやってきて「おはよう」と声をかけて追い抜きざまにこの「ひっつき虫」を巧みに付けていく悪友もいた。この「ひっつき虫」はタチが悪く、くっついたことに気付かずに長期間経ってしまったり、うっかりポケットに入れっぱなしにしたりすると、茶色く変色してバラバラになって微小な棒状の「ひっつき虫」が多数発生して、それを一つずつ剥がすのは大変で、神経質を要することだった。
雑草にも栄枯盛衰がある。外来種のセイタカアワダチソウが増殖してススキが絶滅かと言われた時期があったが、近年ではセイタカアワダチソウは減少傾向でススキが復活しつつあるという。前述のオナモミも今では絶滅危惧種であり、外来種のオオオナモミに取って代わられているそうである。
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