神経質礼賛 1198.「食」と森田療法
森田療法学会では、多職種の方の発表が増えている。今回、面白かったのは、「食」と森田療法について着目した、札幌の大通りメンタルクリニックでスタッフをしておられる雫石千園さんによる着物をお召しでの「森田療法全集第五巻から読む“食事”とは」という発表だった。
全集第5巻は形外会での森田先生やお弟子さんや患者さんたちの発言の記録であり、身近な生活上の話題も多い。以前、「生活の発見」誌で「2003年第2回森田療法カルトクイズ」として出題された中に、森田先生がどうしても好きになれない食物は何か(正解:サメとエビ)というものがあった。それについては森田先生御自身の解説を聞いてみよう。
私は十余年前、支那そばを食って、その内のエビが、腐敗したような味がして、気持の悪かった事がある。それ以来、少しでもエビを食うと、唇や口腔粘膜がピリピリし、胃に不快感が起こり、はなはだしい時は口の粘膜が腫れるような事もある。この特異質という事は、あるいは血の中に、異種蛋白が入る事により、血清中に特殊の物質ができて、かの血性病のように、以後その蛋白に対して、病的反応を起こすというような性質のものかもしれない。私の場合にも、自分が支那料理などで、エビという事を知らないで食べても、同様の反応が起こるのを見れば、単に精神的の反応でない事がわかる。
なお特別なものの嫌いという事は、実際には精神的に起こる事が多い。私のサメの嫌いなのも、母からの影響であるが、ある場合に、種種の精神的感動から起こる事のあるのは、想像しやすい事である。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.589)
エビに関しては嫌いというより食物アレルギーだったのだろう。同じページの少し前の所に食事に関する一般論が書かれていて、今回、雫石さんもこの部分に着目して発表しておられた。
親が子供の愛に溺れて、やたらに子供の好きなものばかりを食べさせる事は、子供の気分本位を養い、神経質に育てあげる事は、明らかな事です。最も大切な条件は、家庭が質素であって、偏食にならずなんでも食べるという事で、一食一、二菜で、一食におかずの種類の多い事はいけないのです。
実際、胃腸の不調を訴える神経症の患者さんには特別な食事を与えることなく、皆と同じように食事をして同じように作業をするよう指導したところ、それまで食べられなくてすっかり痩せてしまっていた患者さんが健康体になったような例が全集第5巻にはいくつか記載されている。もっとも、森田先生御自身は一人息子の正一郎さんには大甘で溺愛しており、欲しい物は何でも買い与えていたから、どうか、というところがある。
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