神経質礼賛 1191.キレる中高年
9月28日の毎日新聞夕刊第2面に特集ワイド「オヤジなぜキレる?」という記事があって興味深く読んだ。かつては「キレる若者」と言われていたのが、近年はそれが中高年にも広がりを見せ、「暴走老人!」などという本も出た。街角や電車の中などでキレるおじさんたちが増加し、犯罪白書でも暴行容疑で検挙された老人男性は激増しているという。記事ではキレる原因を分析して、まず、言語力の老化を挙げている。孤立した中高年男性が積年のストレスを爆発させてしまうのではないかと。また、社会に余裕がなくなるとともに、マニュアル社会やIT化で中高年男性の立場が弱まっているのも一因ではないかという。
もっとも、キレるのは男性だけではなく女性にも言えることではないだろうか。商品やサービスに過度のクレームを付ける女性もよく話題になる。先日、私が仕事帰りに歩いていたら、一方通行を逆走してきた車があって危ないので、ジェスチャー交じりに「一方通行を逆走していますよ」と言ったら、運転していた五十代とおぼしき女性が窓を開け、逆ギレ口調で「あっそう! いちいちありがとッ!」と言って、そのまま逆走を続けて先にあるコインパーキングに入って行ったので唖然とした。キレるオバサンもありだ。
老若男女を問わずキレる社会になってしまったのか。社会全体、潤滑油不足になっているという気がしてならない。かくいう私自身、何度か書いたように怒りの沸点が低いことを自認している。キレるオヤジにならないよう、注意しなくては。森田正馬先生は「感情の法則」を三項目挙げておられる。
今感情の事実に就て、極めて大体の通則を挙げて見れば次のやうなものである。
第一、感情は之を其儘(そのまま)に放任すれば、時を経るに従ひて自然に消失する。
第二、感情は之を行動に現はせば、速かに消失し、若しくは変換する。
第三、感情は、之を続いて刺戟し、従つて之を発動すれば、其感情は益々強盛となるものである。 (白揚社:森田正馬全集 第7巻「恋愛の心理」p.62)
さらに第四として、「感情は之に慣るゝに従ひて鈍くなる」を加えて書かれたものもあるけれども、これは第一に含まれるであろうから、実質的には三項目と言ってよいだろう。キレる人は、怒鳴ったり物に当たったりすることで、第三に書かれているように、怒りにさらにエネルギーを注入してしまうのである。第一にあるように、感情は放っておけば自然に消退するのであり、やるべき行動をやっていれば、第二にあるようにさらに速やかに消失する。本当にキレそうになったら、とにかくその場を離れて頭を冷やし、今自分がやるべきことは何だろうかと考えてそちらにシフトするのがよい。
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我が身にピッタリ当てはまる適時の記事に感謝がいっぱいです


火曜日の不快事がいまもくすぶっています。
病院に付き添いに行ったのですが、採血の人間の態度が気に入らなくてカッときました
その時、いつまでも不快が消えないので、ちょうど血圧計がありましたので計りました。
93-152 脈が88。いつもは90-130くらいです。
そして25分後には
89-149 脈は93でした。
怒ると上がるというのは本当みたいです??
キレるという言葉がマスコミでよく出てくるようになったとき、
「キラせる」側について調べていないな、と不満でした。
やはり気分をやりくりせず、「我慢」の一語だと思っていたところです。
今回の先生の記事を深く味わわせて頂きます。
投稿: たらふく | 2015年10月 2日 (金) 17時37分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
不安・緊張状態、さらには憤怒・興奮状態では交感神経が亢進し、血圧が上昇します。よく、病院で看護師さんに血圧を測定してもらうと高くなる「白衣高血圧」ということが言われます。私自身は外来担当日の空いた時間に自分の血圧を測ってみると、やはり緊張のためか(笑)、普段よりも10から20は高くなっています。これなどは別の意味での白衣高血圧でしょう。
「キラせる」側について調べていない、という御指摘はごもっとも。周囲に配慮がない(神経質が足りない)人が多くなっているので、「キレる」というより「キラされる」という面もありそうですね。
投稿: 四分休符 | 2015年10月 2日 (金) 20時58分
一通の時って、案外途中で気づいているので、わざわざ「一通ですよ」とポーズされて、イラッとしたのですね
案外人間て、それやれば相手だってイラッとするでしょ、ってことやってるもんですよ
私は友人にそれを指摘されて、明らかにイラッとさせるだろという時には言動、行動に注意するようになりました
もちろん、逆走はいけないことなんですけどね…
投稿: | 2015年10月26日 (月) 19時36分
コメントいただきありがとうございます。
①気付いていない、②途中で気付いたがそのまま、③最初から承知の上でやっている、が考えられますが、仰るように②、もしくは③だったのでしょう。
相手がその筋の人の場合もあり得えますから、見ザル聞かザル言わザルが無難な生き方であることは間違いありません。
投稿: 四分休符 | 2015年10月26日 (月) 21時31分