神経質礼賛 1193.グリシン
読売新聞のネットニュースの最初の方には広告がいろいろと出ている。「50代からの睡眠改善」という某大手食品メーカーの広告が気になってクリックして見た。そのサプリメントの正体はグリシンH2NCH2COOHという単純な構造のアミノ酸だった。コラーゲンに多く含まれているアミノ酸である。そして中枢神経系では重要な神経伝達物質でもある。これを夜飲むと、睡眠が深くなり、睡眠の質が改善されるのだと言う。そして副作用がなく安全だと謳っている。と聞くと、不眠に悩む神経質な方々が飛びつくかも知れない。
しかし、グリシンは決して珍しいものではない。実は近年、食品添加物としても多用されている。甘味があるので、調味料・保存料としてコンビニ弁当やおにぎりに添加されているのだ。それに、肉や魚介類には多く含まれている。さらには、生体内で合成もされる。だから、現代人の食生活では十二分に摂取できていて、グリシンが不足することは考えにくい。いくら副作用がないと言っても、先天的な病気でグリシンを分解する酵素が欠損した人では高グリシン血症となって神経障害をきたすこともある位であるから、多量に摂取して絶対に害がないとも言いきれないはずだ。あえてグリシンを飲む必要性はなさそうである。
○○に良い、というサプリメントが花盛りだが、どれも、それだけ摂ればよいというものではない。それに、例えば盛んに宣伝されているグルコサミンやコンドロイチンを経口的に摂取してもその成分が目標とする関節に行ってくれるとは限らない。そんなに都合よくはいかないはずだ。CMが頭に刷り込まれることでプラセボ効果を増強している可能性も否定できない。バランスの良い食事を摂って、適度に運動して、生活リズムを整えるのに勝るサプリメントは存在しないと考えた方がよいだろう。
そうそう、「以上はあくまでも個人の感想であり、医師としてサプリメントを一切否定しているわけではございません」という一文を念のため付け加えておこう(笑)。
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はちみつの産地偽装とか、広告にはひどいのがありますね。
はひどいもんですが野放しです
初めからひっかけるつもりで、かつクレームが付いたら
「(不親切かもしれないが)嘘は書いていない」等の
言い訳まで用意してあるようなものまで。
消費者庁ってのがありますが、余った役人の寄せ集めで、
ほぼ何もしていませんね。
外国語教材やスクールのだまし広告
投稿: たらふく | 2015年10月 9日 (金) 22時07分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
TVコマーシャルでも怪しげなのがあります。ぶよぶよの体型が筋肉質に変貌するのなどは、よくクレームが付かないなあ、と思っています。サプリ系のCMは「あくまで個人の感想です」というテロップを表示して逃げています。ましてや折り込みチラシはもっとひどいのがあります。
やはり神経質を活用して騙されないのが一番です。
投稿: 四分休符 | 2015年10月10日 (土) 18時49分
もう十年以上前になりますが、私と母は反対したのに、膝痛に悩んだ父がサメの何とか成分のサプリメントを飲んでいた時期があります。外国旅行を前にすごく焦っていて、コマーシャルを見てまさに飛びついたのです。それが効いたのかどうかはわかりませんが、膝痛は治まり、父は嬉々としていました。その事を、碁会所で顔を合わすお医者さんに言ったら、「そういう事はあまり人に言わない方がよい」とやんわり言われたと言っていました。万が一、他人に不利益をもたらしたらイヤですから、その先生、よく父を諭して下さったと感謝しました。だって、その後間もなく父は痛風になったのですから!~そのサプリが原因とは言い切れませんが、疑い深い私は疑っています。それに、病院では、薬剤師さんに薬暦といっしょに「何か飲んでいるサプリメントはありますか」と聞かれることもあるのですから、一定の注意は必要なのだと思っています。
これは何でも心配になる超心配性の神経質の根拠のない話とお断りしておかなければなりません(大笑)。
投稿: nonboo | 2015年10月11日 (日) 21時38分
nonboo様
コメントいただきありがとうございます。
民放、特にBS番組を見ていると、サプリメントのCMがしつこく流れていますね。サプリは効果・副作用ともハッキリしない部分が大きいので、大いに疑ってかかった方が安全です。
食品も同様、TV番組で「○○が体に良い」と言うと、スーパーからごっそり消える位に一時的に売れますけれど、その○○ばかり摂取したら栄養が偏っていけません。例えばDHAを摂るためにサバとイワシばかり食べていたら痛風になる恐れがあります。また、服用している薬と相性の悪い食品も存在します。こういうことに関しては、心配性の神経質であるのが一番です。
投稿: 四分休符 | 2015年10月12日 (月) 00時51分