神経質礼賛 1206.河井寛次郎記念館
今回、京都へ行った際に歴史関連とは別に見たいと思っていたのが河井寛次郎記念館である。京都国立博物館を見終わったのが11時過ぎだった。東大路を北に向かって歩く。だんだん北風が出てきた。観光シーズンのため、ネットで調べてあったレストランはいずれも外に行列ができていたり予約で一杯だったり。朝から歩き続けだったから電池切れ気味である。渋谷通に入って西に向かい河井寛次郎記念館の方に曲がる手前に喫茶店があったので入る。市川屋珈琲という名前のこの店は3日前に開店したばかりとのことだった。カフェオレで体を温め、ベーコンと壬生菜のサンドイッチがとてもおいしかった。内装も京町屋の情緒が残っていて良い雰囲気だった。
河井寛次郎記念館を通りから見ると地味な京町屋の風情で入口の戸も閉まっているから、入るのにちょっぴり躊躇する。中の作りは寛次郎自身が日本各地の民家を参考にして設計したということだ。外国人観光客が多いのには驚く。自身がデザインした面白い形のベンチや椅子があって、座るとお尻がすっぽりはまる。二階に上がって上段の間に飾ってあった木彫像に目が行った。お多福顔の母親が同じ顔の娘を抱っこしている像である。ほのぼの感が伝わってきて見るものをシアワセにしてくれる。猫好きの人ならばテーブルの中央にちょこんと座った猫の像に惹かれることだろう。一階に下りて中庭に沿って陳列室・茶室・素焼窯が並ぶ。私は陶芸はよくわからないが、遊び心があって面白い作品が多いように感じた。その奥には陶房があり、一番奥には巨大な登り窯があった。とてつもない広さである。
寛次郎は有名な陶芸家、ということしか知らなかったが、実に多才な人だった。東京高等工業学校(現在の東工大)で学んだ時代のノートも展示されていて、理系の素養も相当あった人だ。窯業を科学的にも研究していたという。彫刻、デザイン、書、詩、随筆など幅広い分野の仕事をしている。また、含蓄に富む言葉も多く残している。その中で「手考足思」は頭でっかちに陥りがちな神経質人間にはピッタリの言葉のように思う。また、「暮らしが仕事 仕事が暮らし」は森田正馬先生が患者さんたちに指導した仕事三昧の日常生活を示しているようにも思えてくる。
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