神経質礼賛 1211.お見送り
早朝に枕元のPHSが鳴る。私の受け持ち患者さんで、末期の肝硬変のため、このところ意識障害が続いていた方の呼吸が停止したとの連絡だった。看護師さんとともに最期を看取る。一仕事終えて病棟から戻る途中、窓の外に目をやると、雪を被った富士山に朝日が当たって赤く見える。夜が終われば朝が来る。こうして亡くなっていく人もいれば、今どこかでこの世に生まれてくる人もいるだろうな、と思う。
精神科病院では一般の病院に比べるとそこで亡くなる方の数は少ない。それでも、年に3人位は担当している患者さんの死に直面する。多くは高齢の長期入院者であり、老衰に近い状態あるいは重篤な合併症がありながら精神症状のために一般病院では対応しきれないため精神科病院で最期を迎えることになる。
いつものように看護職員と一緒に並び、礼をして霊柩車を見送る。霊柩車が見えなくなったところで合掌する。いつも「お見送り」をすると、その患者さんにまつわる様々なことを思い出す。暑い盛りに病院から逃げ出したものの道に迷って熱中症寸前で通りがかりの人に助けられて病院に送り返された人、盗み癖があって困った人、病識がなく妄想に基づき私に「このヤブ医者!」「殺してやる!」などと怒鳴りつけた人、いろいろな人がいたが、どの人もまだまだ生きていて欲しかった。
思い出しついでに、私が研修医だった頃、精神分析を専門としてADHDやアスペルガーの大家になっている先輩医師から、「お前は葬儀屋に向いてるなあ」と言われたことがあったのを思い出す。私が神経質でカタそうに見えたからだろう。そうそう、最近、毎日病院に来ている清掃業者の女性から「知らずに霊安室の清掃に入った時に御遺体がある時にはビックリするので、わかるようにしてもらえませんか」と言われた。ミーティングの場でそれを言ったが誰もやろうとしないので、当直中に自分で霊安室のドアに付ける札を作った。ドアが金属製なのでマグネットで止められる。「使用中 お静かに願います」、裏側は「空室」というものである。
お見送りをするたびに、こうして働くことができて御飯を食べることができるのはつくづくありがたいことだと思う。今と言う時間を大切にしなくてはもったいない。
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冠雪のではありませんが、私の部屋にも黎明の富士山の写真が飾られています。今の職業に就いたとき、先輩が祝いにくれたものです。その人は写真が好きで、自分で撮ったものを額に入れてプレゼントしてくれました。その気持ちに、いつの日か何らかの形で応えなければと思っています。
今日、今川焼を食べました!用事で行った所の近くに好い雰囲気の今川焼の老舗があるので、その店に寄るのを楽しみに出掛けました。変わらず美味しかった♪鯛焼屋もおいしいと噂の店があるので、年内に行こうと計画しています。と言うのは、鯛焼は冬の季語。そして、歳時記を引いたら、なんと鯛焼の前に今川焼と肉饅頭(蒸饅頭の傍題)が!今川焼の句は一応詠みましたが、もっと詠もうと思います。鯛焼もきっと詠みます。
投稿: nonboo | 2015年12月 6日 (日) 03時27分
nonboo様
コメントいただきありがとうございます。
富士山はすっかり雪化粧です。同じ場所から見ても時々刻々と姿を変えますので、写真愛好家にとっては絶好の被写体です。そして、森田先生が「笑って青山を望めば山また笑い、泣いて碧水に臨めば水また泣く」と言われたように、見る者の心境によっても見え方が変わるのだと思います。
たい焼きは私も好きです。今年、近所に新しいたい焼き屋ができたので、今月になって買ってみました。一匹150円ながら、餡が甘さ控えめで上品な味。周囲にカリカリの「羽」が付いているのも魅力です。3匹買うと1匹おまけのサービス券をもらって、つい昨日もまた買いに行ってしまいました(笑)。
投稿: 四分休符 | 2015年12月 6日 (日) 17時59分