神経質礼賛 1230.神経質はストレス増?
昨日1月28日の毎日新聞第14面に「神経質はストレス増」という大きな見出しの記事があった。免疫学、特にアトピー疾患を専門とする順天堂大学の奥村康特任教授が書かれたもので、こういう記事を見ると、「ああ、やっぱり神経質はダメなんだー」としょげてしまう方もいらっしゃるかもしれない。血圧などを薬できちんとコントロールし、喫煙や酒の飲み過ぎを控えるよう指導し、食事や運動面でも専門家が細かくアドバイスした人たちよりも、何も制約しない人たちの方が死亡・自殺・心血管系疾患が少なかった、というフィンランドでの疫学調査結果を紹介し、健康管理に神経質になるのはマイナスである、と述べている。しかし、その主張は、必要以上に健康のことを考えない方がむしろ健康に良い、という逆説であり、これは実は森田療法にも通じる面を持っている。
神経症の症状は実に多彩であるが、器質的な異常がないのに起こる、頭痛、耳鳴、めまい感、動悸、胃腸障害、震戦などの一見身体症状は、それをなくそうとすればするほど注意が自分の身体に向かい、さらに感覚が鋭敏になって、かえって一層症状を強めてしまうのである。森田療法では、つらいけれども症状は相手にせず、四方八方に気を配って行動していく。すると症状はいつしか消えているばかりでなく、仕事や勉強もはかどっているのである。神経質性格を生かして、病気探しよりも健康な部分を伸ばしていくのが森田式である。それが身についていれば、神経質らしく検査データはきちんと管理しておくが、あまり結果に一喜一憂せず、長い目で見ての健康管理ができるようになるはずである。
記事の中には奥村流ストレス予防法10か条が書かれていた。「何があっても能天気にかまえる」は私のような神経質人間にはできそうもない。「趣味をつくる」「食べる楽しみを持つ」はOKだ(と言ってもヴァイオリンとヘボ将棋にB級C級グルメだが)。
神経質人間には今まで紹介してきた家康公や貝原益軒のように長命で亡くなる直前まで働いていた人物も少なくない。森田正馬先生のお弟子さんにも高良武久先生や鈴木知準先生のように御長寿で長く活躍された方々がおられる。神経質は「生の欲望」が強いので、そうした方々にあやかれば健康寿命が延びること請合いである。
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