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2016年3月11日 (金)

神経質礼賛 1244.運命

 時間が空いた時には楽譜を少しずつパソコンに入力している。今やっているのは、ベートーヴェン作曲交響曲第5番「運命」のヴァイオリン・ピアノ編曲版である。友人のところに楽器を持って遊びに行ったら「こんな楽譜を買ったよ」ということで早速一緒に弾いて楽しんだ。私もその楽譜を入手し、ようやく第一楽章と第二楽章の入力が終わったところだ。入力したらヴァイオリンパートをはずしたWAVファイルを作り、それをCD―Rに焼くこともできるし、MP3ファイルに変換して携帯音楽プレーヤーとポータブルスピーカーでいつでもどこでもカラオケを楽しむことができるのだ。

 クラシック音楽に馴染みのない方でも第一楽章の冒頭の旋律はよく御存知だと思う。ベートーヴェンが弟子に「このように運命は扉を叩く」と語ったところから「運命」と呼ばれるようになった、あの旋律である。それはバッハのトッカータとフーガニ短調やツィゴイネルワイゼンの冒頭部分とともに、TV番組では緊迫した場面でよくBGMに使われている。最初に八分休符が入っているので、演奏する側は強い緊張を強いられる。正確には「ン・ジャジャジャジャーン」なのである。アマチュアのオケでは合わせるのに苦労する。もしも、この休符がなかったら、この緊張感は出てこなかったろう。覚悟を決めて扉を叩き、恐怖に突入していく、その直前の一瞬を示す八分休符のようにも思える。

 森田正馬先生の治療を受けていた劇作家・倉田百三は著書『神経質者の天国』の巻末に「我々は、運命を堪え忍ぼう」と書いた。それに対して、森田先生は病苦と貧困にあえぎながらも俳句や随筆を書き続けた正岡子規を引き合いに出して、「運命は堪え忍ぶものではなく、切り開くものである」と述べていることは、900話で紹介した通りである。森田先生自身も、一人息子の死、妻や母の相次ぐ死、自らの病苦がありながらも、神経質治療、教育、著述にあたられ、生き尽された。音楽家にとって致命的な難聴、そして貧困や失恋や種々の絶望感がありながらも作曲を続けたベートーヴェンの生き様もまた同じである。

 四苦八苦というように、この世に生を受けた以上、老・病・死は避けられない。しかしながら、たとえ厳しい状況に見舞われても、その中で精いっぱいできることをやり尽くして、運命を切り開いていくことはできる。それが森田的な生き方なのだと思う。

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コメント

私は、今後いくつかの演奏会へ行く予定なのですが、その中に「運命」もあります。 「ン・ジャジャジャジャーン」を味わってきます!
最近、「月光」を好んで聴きます。曲自体は聞いたことがあるけど、「月光」というのね、というパターンです。これもいつか生演奏で聴いてみたいものです。クラシックは知識がなくとも十分楽しめますね。時々、気になる用語を検索はしますけど。
先生はヴァイオリン、奥様はピアノ、うらやましいです~。何か弾ければ楽しいだろうなぁとつくづく思います。

nonboo様

 コメントいただきありがとうございます。

 年末の「第九」に続き、今度は「運命」ですね。作曲者が指定した「運命」のテンポはものすごく速いんですよ。その通りの演奏はほとんどないと思います。指揮者によって十人十色の「ン・ジャジャジャジャーン」なので、聴き比べてみると面白いですよ。
 「月光」などのピアノ曲もいいですね。ぜひお楽しみ下さい。
 楽器で手軽に始められるのはオカリナかと思います。私もソプラノとアルトの2本を持っています。小中学校のリコーダー並みの簡便さ、かつ数千円で購入できる手頃さながら、奥深さもあって良いと思います。
 

 オカリナ、持っています! 15年くらい前に母に買ってもらったもので、全体はベージュで、ピンク・グリーン・クリーム色の花が描かれています。可愛らしさに魅せられて、それを選びました。
 HPを見たら、ソプラノでした。また、まったくの初心者におすすめとあったので、よかった♪入門書に「アメイジンググレース」、「新世界」もほんの少しだけど載っていて、びっくり。YouTubeにあった「ジュピター」のオカリナ独奏を聴いて、またびっくり、とても良かったです。あのときはすぐギブアップしちゃいましたが、再びちょろちょろとやってみようと思います。
 YouTubeで、ということになりますが、「運命」の聴きくらべをしてみたいと思います。「モルダウ」が好きで、カラヤン指揮のベルリン・フィルのCDでたまに聴きます。それから受けている印象と、冬の終りに行ったコンサートで演奏された「モルダウ」は、違うなぁと感じました。

ありがとうございました。← 書き忘れました。

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