神経質礼賛 1263.さざれ石
5月3日の休日にどこかへ出かけてみようと思った。そうだ、以前、神経質の偉人として白隠禅師(拙著p.237)のことを書いていたから白隠さんゆかりの寺・沼津市原にある松蔭寺へ行ってみようと思い立った。調べてみてガッカリ。毎年4月29日に寺に収蔵されている白隠禅師の書などを公開しているのだそうで、ちょっと遅かった。それでも思いついたのだから、と気を取り直して出かけた。
まずは三島駅東海道本線上りホームの桃中軒の立ち食いソバで腹ごしらえ。この上りホームには下りホームや新幹線ホームの店にはない限定メニューがある。注文を受けてから揚げる「エビと野菜のかき揚げソバ・うどん(450円)」だ。待ち時間2分で揚げたてのサクサク・ホクホクの天ぷらが載ったソバが食べられる。おいしくいただいて、塩分を気にしながらついつい汁も半分位飲んでしまう。食べ終わってから下りホームに移動する。
電車は行楽客でとても混んでいた。たまたま先頭車両の一番前のドアから乗った。運転士さんの近くに立つ。運転士さんの前方右には発着予定時刻や制限速度が記載されたシートが掲げてある。よく見ると発着時刻は1分刻みではなく15秒刻みで書かれている。運転士さんは信号や踏切を確認し、時々そのシートを確認しながら運転している。まさに四方八方に気を配りながらの運転である。安全で正確な運転には神経質が欠かせない。
三島から3つ目、原の駅で降り、旧東海道を東へ歩いて松蔭寺までは10分ほどだ。途中に白隠生誕地の碑や産湯の井戸がある。煩悩の数108枚の石瓦を頂く山門をくぐると、本堂からは法事の読経の声が聞こえてきた。境内を散策する。白隠禅師の教えに感銘して良寛さんが書いた句碑、百体地蔵、すり鉢松などを見る。その後、寺の外の小道から中庭の「さざれ石」を見て写真を撮る。近くにいた老尼僧が「そこの門(通用口)を開ければ入れますよ」と言って下さったが、いくらなんでも不躾なのでお礼を述べるにとどめた。
さざれ石(細石)とはあの君が代の歌詞に出てくるさざれ石のことである。細石が巌(いわお)となる、という歌詞は非科学的じゃないか、と考えがちだが、石灰岩が雨水で溶解してできた成分が石の間に入って固まって長い年月で天然のコンクリート状の巌ができあがることは実際にあるのだ。そうした巌となったさざれ石は全国あちこちの神社に祀られている。松蔭寺のさざれ石はなかなか大きく立派な巌であり、ありがたいパワーストーンかも知れない。そして私たちも取るに足りない細石のような日常の些細な努力を積み重ねていけば、やがてはそれらが巌となりうるのである。
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