神経質礼賛 1280.早く手を出す
私たち神経質人間は、いろいろ思いついてもそれを行動に移すのに時間がかかる。せっかく良いことを思いついても、その手間を考えて面倒だなあ、どうしようかなあと思案してみたり、他の人がどう思うだろうかと気になったりして、結局何もしないまま終わるということがよくある。万事、熟考してから行動するので、大きな失敗は少ない反面、チャンスを逃しがちである。森田正馬先生は「腰を軽くする」「早く手を出す」ということをよく患者さんたちに指導しておられた。
いま、神経質の気質を、いかにして変化させるか。これは面白い問題ですが、ここの治療を受けて、気の重いのが、軽くなったという事を自覚されている人も多いことと思う。つまり、ここへ入院すると腰が重くなくなる、手が出やすくなる、鋳型主義・理想主義にとらわれなくなる。予定や設計をせず、時々の感じや物に触れて、早く手を出す癖がつく。これが一番大切。しかし、これは神経質に限る事で、意志薄弱性や発揚性気質の者は、なかなか容易にこれを感化・改良する事はできない。
ではいかにしてこのようになるか。理屈をつければ、万物流転・諸行無常で、万事世の中の事は、予定通りに行くものではないという事を体験自得して、その理想主義・標語・格言主義を捨てる事になる。この事が、治った人には、チャンとできている。(白揚社:森田正馬全集第5巻 p.422)
森田先生の指導を受けて書痙と対人恐怖がよくなり、のちに形外会の副幹事として神経質者たちにアドバイスをしていた山野井房一郎さんは著書『神経質でよかった』の中で能率的生活6か条を提唱している(660話・661話)。それは
(1)やさしいことから手をつける
(2)理屈は後回しにして、とにかく手を出す
(3)少しのひまがあれば手を出す
(4)場所を選ばないで仕事にかかる
(5)時々仕事をかえる
(6)億劫なときは無理にはしないが、仕事はしまいこんでおかず、常に目につく所においておく
というもので、「早く手を出す」ことの重要性を強調しておられる。とにかく理屈より行動である。
最近のコメント