神経質礼賛 1271.アドラー本ブーム
街の大きな書店の目立つ場所に『嫌われる勇気』などのアドラー心理学関係の本が平積みされているのをよく見かける。読みやすくしたマンガ本もある。今年NHKのEテレで番組が組まれたりTVのニュースでも取り上げられたりして、ちょっとしたブームになっている。
アドラー(弘文堂の新版精神医学事典ではアードラーと表記:Alfred Adler 1870-1937)はハンガリー系ユダヤ人でウィーンに生まれた。ウィーン大学医学部を卒業した後、ウィーン病院に精神科医として勤務し、フロイトの研究会に参加していた。神経症の原因が性的な心的外傷にあり、その原因を追究しようとするフロイトの精神分析から、やがてアドラーは離れて、目的論的立場を主張していくようになる。そして自らの心理学を個人心理学と呼ぶようになった。アドラーは、すべての人間はなんらかの身体器官の劣等性を持ち、それを補償しようとする傾向により、その人の生き方が影響されると考えた。アドラー自身、幼少時は病弱であり、母親からかわいがってもらえず、低身長だった。また、内科医として開業した場所が遊園地に近く、そこで働く軽業師や大道芸人などの患者たちの多くが実は幼少時は病弱だったり身体的な欠点があったりしながら、それを努力により克服して生計を立てていることを知り、「補償」「過補償」の理論を考え出したと言われる。フロイトのように過去志向ではなく、今ここで、を重視した未来志向であり、自分の行動や思考の目的を見出していくところに特徴がある。アドラーは教育方面にも力を注ぎ、児童相談所を設立している。彼の教えの中には、ありのままの自分を受け入れる、他人の役に立ってみる、といったものがあって、森田正馬先生の教えとも重なる部分を持っているように思う。
森田先生が形外会で語ったことは白揚社の森田正馬全集第5巻に収録されていて、当ブログでもたびたび紹介しているが、神経質者のみならず誰にも役に立つ教育的なものを含んでいる。アドラー本に負けずに森田正馬先生の存在を世に知らしめていく必要があると思う。
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文科省は人文系の科目を軽視し予算の面でも縮小を計っているようです。心理学は人気が高いですが、森田療法について知り始めると、時間かけるのはもったいない気がします

ゼミの教授が心理学者で「たばこは吸いたい時に3回我慢したら辞められる」と言ってました。これは本当でした。
高校までの英語教育が受験で点を取る以外、ほぼ無意味なように、生ぬるいインチキもんが、
世には蔓延っています
投稿: たらふく | 2016年6月 3日 (金) 15時59分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
実学重視というと聞こえは良いのですが、金にならない学問は切り捨てる、というのはいけませんね。企業から研究費が取れない分野こそ国が資金を投じて研究に専念できるようにするべきです。そして、森田正馬先生のように文系と理系と両方の能力を兼ね備えた人材を育成することが必要だと思います。
投稿: 四分休符 | 2016年6月 3日 (金) 21時17分