神経質礼賛 1273.不眠症の椎名誠さん
6月3日付毎日新聞夕刊の「人生は夕方から楽しくなる」というページに作家の椎名誠さん(71)のインタビュー記事があった。新宿の酒場でニコニコしながらビールを飲んでいる椎名さんの写真が大きく出ている。若い頃から一晩にビール大瓶1ダース以上という大酒家は「年相応に酒量も減って、ビール大瓶2本にワイン、焼酎を毎日飲む」程度になったのだそうだ。椎名さんは長年にわたり不眠症に悩まされてきた。深酒したり好きな落語を聞きながら寝ようとしたりしたが効果はなかった。結局、「安らかな自然な眠りは戻ってこない」とあきらめて、眠れない自分を受け入れ、睡眠薬を上手に使い、精神が楽になる道を探すしかない、ということである。今も不眠は頑固だけれど、ちょっとした時間を見つけて少しまどろみソファで目を閉じる、それで日々をやりくりしていければいいや、と考えているという。
何本も連載を抱えるプロの作家ともなると原稿の締め切りに追われ、ストレスフルな上、どうしても生活が不規則になるから、良質な睡眠はとりにくいことは容易に想像できる。酒量が減ったと言っても、アルコール依存症レベルの飲酒量である。アルコールは睡眠の質を悪化させることは、当ブログで何度も書いている通りである。飲酒した上での睡眠薬はさらにいけない。それが常態化していると、もはや耐性がついてしまっていて、ますます眠れないということになってしまうのである。一医師としては、何とか週1、2日は休肝日を作って、アルコールと睡眠薬の併用はやめて、お体を大切にして良い仕事を長く続けていただけたら、と思う。
しかしながら、長年の不眠症に悩まされた挙句に達した、眠れなくてもよい、体を休めて、それで日々の生活が続けられればそれでよいのだ、という結論は、森田療法の不眠への対処法と同じである。神経症性の不眠は「眠らなければいけない」という過度のこだわりによるものであり、眠れなくてもよいのだ、と開き直った時、悩みは消えている。そして、神経症性の不眠では、本人は「一睡もしていない」と主張しても、実際にはそれなりに眠っているものである。
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