神経質礼賛 1274.水素水
最近、水素水と称するものが流行っている。ペットボトル入りのものが売られているし、水素水を作る装置が有名電気メーカーから発売されている。健康番組大好き人間の妻がいろいろTV番組を見て、今にも買わんばかりの勢いである。そもそも水素水とはどういうものなのだろうか。水素を多く含んだ水のことで、水に直接水素ガスを溶解させる、あるいは水の電気分解で作られる。
電気分解で作られるアルカリ電解水は胃腸症状を緩和する効果があると考えられていて、かなり前から電子イオン水とか呼ばれて生成装置が販売されていた。私の母方の親類で、その代理店をしていた人がいて、私が子供の頃、物好きな父が購入した。かなり高価だったはずである。大きな木箱2つの装置で、片方は電圧計と電流計がついた直流電源器、もう一方には四角形のポリタンクと内側に円筒状の陶器が入っていて、そこに水を入れ、大きな炭素棒電極が5本(中央に1本、四隅に各1本)付いたものを上からセットして電流を流すと、炭素棒に小さな気泡が発生した。何のことはない電気分解装置である。陶器の中にできる方が飲用であり、これが今で言う所の水素水だった。3、4年は使っただろうか。私も時々その水を飲まされた。別に目立った効用があるはずもなく、手入れも面倒だから、そのうち押入れに入れられたまま忘れ去られていた。昨年、旧実家の片付けをしていて出てきたので、燃えないゴミとして処分した。
水素水の効用はいろいろ言われているが、何百人、何千人を対象とした二重盲検試験(どちらが本物か与える側も与えられる側もわからない条件で実薬投与群とプラセボ(偽薬)投与群を比較して調べる試験でありプラセボ効果を除外するためには必須)で結論を出してはおらず、どれも数人から数十人規模の少数のデータで医学的な効用の可能性を謳っているため、本当のところはまだわからない。それに水素水といってもどれだけ水素を含有しているかという問題がある。水素が有害な活性酸素を還元してくれそうな気はするが、飲んだ場合、胃以外の組織に水素がどうやって達するのか疑問である。そもそも水素水は疑似科学だとする批判もある。万病に効くというような話は極めて怪しい。今年の3月には消費者庁が一部の行き過ぎた医学効果を宣伝している業者に対して業務停止命令を出している。マルチ商法まがいの販売方法を行っている業者があるのも問題である。あわてて飛びつくことはない。買うのは科学的なデータが蓄積されて評価が定まってからでよい。
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今回の記事で "マイナスイオン" を謳う空気清浄機やエアコンを思い出しました。
電解した状態で空気中や水中にとどまれるわけはなく、飲んだり吸ったりできるのは当たり前の水や空気です。ひどいまやかしで、こんなものにクレームが起きないのが不思議です。賢い人は黙っているのでしょうか?
投稿: たらふく | 2016年6月11日 (土) 22時42分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
マイナスイオン効果を謳った電化製品もどれだけ効果があるか怪しいものですね。大部分は思い込みによるプラセボ(偽薬)効果なのではないでしょうか。
マイナスイオンは滝で発生するなどとよく言われますが、夏場に滝を見に行って感じる爽快感は、ミスト(霧)によるヒンヤリ感や滝の轟音や視覚効果の合わさったもので、マイナスイオンの効果とは考えにくいです。
大々的に誇大宣伝をすると、消費生活センターに苦情が寄せられて、ようやく行政が重い腰を動かす、といった有様です。消費者が騙されないように自衛しなくてはなりません。
投稿: 四分休符 | 2016年6月12日 (日) 07時44分