神経質礼賛 1287.一円玉
昨年、実家の片付けをしていたら透明ビニール袋に入った一円玉が出てきた。重さを測ってみるとちょうど300g。一円玉の重量はピッタリ1gなので300円分あることになる。母はもういらない、と言う。置いておいても場所を取るので、少しずつスーパーで使っていった。買物の前に、サイフに一円玉を9枚入れ、一円玉のお釣はもらわないようにしていた。そうこうしているうちに、ついに全部使い切った。眠っていた一円玉が生かせたのである。
一円を笑うものは一円に泣く、とよく言われる。買物をする時に、たとえ一円足りなくても買うことはできないのだ。これが企業ならば、一円どころかたとえ一銭でもコストダウンを図ることが大切になってくる。その積み重ねが大きな利益を生み出すのである。一円玉もおろそかにはできない。蛇足ながら一円玉の製造コストは一枚当たり約3円だそうである。
一円玉だけではない。人がいないのに照明の点けっぱなし、水道水の出しっぱなし、ガスの点けっぱなし、ひとつひとつの金額は大したことはなくても、1カ月・1年でみれば馬鹿にならない。それに貴重な資源が無駄になる。
森田正馬先生やそのお弟子さんたちによる森田療法では、物を無駄にせず、その価値を活かし切ることを日常生活の中で教えていた。例えば風呂の残り湯は流してしまわず、拭き掃除に使い、最後に畑に撒いた。そうした行動は自分の能力を活かし切ることにもつながっていく。「物の性(しょう)を尽くす」「己の性を尽くす」(350話)である。ケチくさいと思われるかもしれない。しかし、森田先生はそうして節約をしながら、郷土の小学校に多額の寄付をしたり、医学生のための奨学基金を出されたりしたのである。それは多くの人を育てるのに役立ったはずであり、「人の性を尽くす」にもなるのである。
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「己の性を尽くす」。素晴らしいです。
1円玉、うっかりすると溜まって
日の目を見ないですね。
切手なんかも、足し合わせて使うと
性を尽くせます
投稿: たらふく | 2016年7月18日 (月) 18時36分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
そうですね。眠っている未使用切手、特に記念切手の類はどんどん活用するに限りますね。
投稿: 四分休符 | 2016年7月18日 (月) 20時23分