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2016年7月 1日 (金)

神経質礼賛 1281.ベゲタミン販売中止

 長年、不眠症の治療薬として使われてきたベゲタミン配合錠が今年の12月末で供給停止となり、在庫切れになり次第、販売中止ということになった。ベゲタミンは糖衣錠で赤色のA錠と白色のB錠がある。主成分のフェノバルビタール(フェノバール)はA錠には40mgB錠には30㎎含まれる。また、他に抗精神病薬クロルプロマジン(コントミン)と抗パーキンソン剤であり抗ヒスタミン剤でもあるプロメタジン(ヒベルナ)が含まれている。フェノバルビタールは現在も抗てんかん薬として用いられる場合があるが、睡眠薬として使用するのは適切とは言えない。古くからあるバルピツール酸系の薬剤であり、依存性の問題や、大量服用で致死量を超えやすいといった問題がある。致死量は5gとする文献があるので、例えばA錠を125錠服用したら致死量に達することになる。慣れた患者さんたちが「赤玉2錠と白玉1錠飲んでいる」「赤玉を増やしてほしい」などと表現するのを聞いたことがある。

 私は研修医の頃からこのベゲタミンが大嫌いだった。患者さんの不眠の訴えに応じて安易にその「赤玉」や「白玉」を増量してしまう無神経な医師がいて苦々しく思っていた。そういう患者さんが私に担当が移ると、粉薬に替えてフェノバルビタールを少しずつ少しずつ減量していったものである。それから四半世紀が経って、やっと「赤玉」「白玉」が姿を消す。近年、次々と安全な睡眠薬が開発されてきている。しかし、不眠症の治療は、まず生活習慣の改善からである。森田正馬先生の言葉を肝に銘じる必要がある。

「患者は毎日熟眠が出来ないといひながら、十二時間以上も臥褥し、五時間・七時間位も睡眠して居るのである。多くの医者は不思議にも、其患者の日常の生活状態や、何時に寝て・何時に起き・其間に如何に睡眠が障害されるか・といふ事を聞きたゞさないで、患者の訴ふるまゝに、不眠と承認して、之に催眠剤を与へるのである。(白揚社:森田正馬全集第7巻 p.401)」

これは残念ながら現代の医師たちにもありがちである。

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コメント

お医者さんが患者の実際を知ろうともせずに
なんでも薬で済ますというのは恐ろしいですね。
四分先生に出会えた患者さんたちは幸せです。
森田先生のお書きになったものなども、
普通の学校教育では 出会えるチャンスは稀だと思われます。
試験勉強だけで要領よく要職に就くシステムが
日本には出来上がっていますが、プロとしての仕事ぶりをきちんとチェックするシステムが
まずどこにもないのは意外な程です。
 自動車会社がウソ検査してたのも役所は見抜けませんでした。 "善人説" で書類を受け取るだけなら、誠に楽な給料泥棒でげす

たらふく様

 コメントいただきありがとうございます。

 森田先生が70年、80年前に警告されていたことが未だに改まっていないのは困ったことです。何の職業でもそうですが、専門家である前に、善良な社会人である必要があります。特に医療従事者にはそれが要求されます。私の師の大原健士郎先生は、医局員に対して、「ただミッテル(ドイツ語で薬の意味)を出してるだけじゃダメなんだよ!」「この患者さんがお前の親だったら、そういう治療をするのか!」とよく追及しておられたものです。

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