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2016年8月 8日 (月)

神経質礼賛 1294.薬ばかりが治療ではない

 担当していた統合失調症の患者さんが退院して3カ月後、体重が増えて尿検査をしてみると尿糖が強陽性になってしまった。入院中は全く問題なかったのだが、退院後は一人暮らしをしていて、揚げ物などの脂っぽいものが大好きであり、近くの中華料理屋へ行ってギョウザ・ラーメン・炒飯をよく食べていたという。血液検査をして、過去1-2カ月の血糖値の平均的な状態を反映するHbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)を調べてみたら正常値が4.6-6.2のところ何と15.8という驚くべき数値が出た。今まで医師をやってきて見たことがない数値である。さあ、困った。糖尿病を専門とする内科に紹介しようか、それとも自分のところで糖尿病の薬を処方しようか。しかし、本人が食事に気をつけて散歩などの運動をして努力してみる、というので糖尿病薬は出さずに訪問看護師さんとヘルパーさんによる食事指導や生活指導でやってみることにした。それから2カ月、3カ月経ち、体重はやや減少傾向ながら、減ったり増えたり。HbA1c10を超えたままで、こちらも内心焦ってくる。しかし、やがてHbA1cは一桁に下がり、6カ月後には6.5と正常近くなった。空腹時血糖は完全に正常である。まだまだ油断はできないが、薬を使わないという方針は正しかったようだ。

 血糖値、コレステロール、尿酸値など、血液検査で異常が出ると、すぐに病名を付けて治療薬を処方する医師は少なくないし、患者さんも放っておいたら大変なことになるという説明を聞いてそれに従いがちだが、生活習慣に根ざした病気は、重症の場合はともかく、まず生活習慣を正すのが本来の治療ではなかろうか。医師が治すのではなく、自分で治すものなのである。

不眠や不安を訴える神経症にも似たようなところがある。睡眠薬や抗不安薬を処方するのは簡単だが、薬には副作用もあるし、依存の問題もある。不眠は気になってもどこかで眠っているものであるし、生きている以上、不安や緊張は避けて通れない。森田療法では「症状」はあっても仕方なしにやるべき行動を取っていくよう指導する。それが神経症治療の本筋であり、神経症は自分で治すものなのである。

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コメント

二回目の投稿をさせていただきます。

「仕方なしに」やることをやる
というのが、重要なポイントであり、森田療法の特長であると思います。

世に溢れるいろいろなマインドアドバイスは、ポジティブに取り組もうみたいなものが多いのですが、無理くりポジティブになろうとしても上手くはいきません。

私はこの「仕方なく」というのでよいというのが、森田療法が好きな理由です。
不眠の翌日は、だるいし辛い、でも仕方なく仕事をやろうという心で生きております。

西岡 様

 コメントいただきありがとうございます。

 大変良い所に気づかれましたね。仰る通り、「仕方なく」がとても大切なところなのです。神経質人間はすぐに理屈をこねくり回して、深みにはまってしまう傾向があります。考えてやりくりしようとしてもどうにもならない、とあきらめて「仕方なく」行動をしているうちに、大きな転回が起こるのです。そして「仕方なく」行動している方は面白いように症状が良くなるばかりでなく、仕事や勉強や日常生活もはかどり、他の人からの信頼も厚くなるものです。

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