神経質礼賛 1300.餓死はあっても不眠死はない
森田正馬先生の治療を受けて神経症が治り、形外会の会長をしていた貿易商の香取修平さんはしつこい不眠に悩まされて、静かな環境なら眠れるだろうと別荘を買って住んだが治らなかったという経験を持っていた。著明な医師が「五日眠らなければ死ぬ」と雑誌に書いていたのを読んで不眠恐怖になったのがきっかけだった。それについて森田先生は次のように言っておられる。
○○博士のいった不眠の事は机上論である。学者の空論である。昔から餓死という事、よく聞く事であるが、不眠死という事は我等薄聞にしてまだ聞いたことがない。飢餓に迫った人は土でも食うとかいう事であるが、実際に食物がなければ、どうする事もできない。これに反して睡眠はどこでもできる。強行軍では歩きながらでも眠る。拷問でもあまり疲るれば眠らないとも限らない。(白揚社:森田正馬全集 第5巻p.60)
そして不眠を訴える他の患者さんに「二日なり三日なり、試みに眠らずにいる事を実行しさえすればよい」と教えておられる。自分は全然眠れない、と主張される方は試みに何日寝ないで過ごせるか調べてやろう、と起きて仕事や勉強をし続けてみたらよい。双極性障害(躁うつ病)の躁状態や統合失調症の激しい興奮状態のために何日かほとんど眠らない人はたまにいるが、それでもいつかは眠っている。神経症性不眠の場合には、眠れなくてよい、と起きていようとすれば、たいていは三日ならずして眠ってしまうのである。
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