神経質礼賛 1306.怖い夢
外来患者さんの中に、悪い夢、怖い夢ばかり見て困る、と訴える人が時々いる。睡眠は、体と脳の両方を休ませる深い睡眠のノンレム睡眠と体は休んでいるが脳は活発に活動しているレム睡眠がセットになっていて、それが普通は一晩に4、5回程度繰り返される。レム睡眠の時に夢を見ると考えられている。夢の内容は忘れてしまうことが多いが、レム睡眠の時に覚醒すると夢の内容を覚えていやすい。レム・・・REM(Rapid eye movement:急速眼球運動がみられる)睡眠の時には骨格筋は弛緩しているが眼球だけは動いている。睡眠のリズムが崩れると、このレム睡眠の間にいわゆる金縛りが起きることもある。睡眠薬やアルコールはノンレム睡眠とレム睡眠のバランスを崩してしまうことがある。それらのために睡眠前半のレム睡眠が抑制されて後半のレム睡眠が増加すると、変な夢ばかり見て疲れが取れない、寝たような気がしない、ということにもつながる。睡眠薬や寝酒がかえって逆効果になりうるのである。睡眠薬の服用はなるべく減らすに越したことはない。
小心者の私は怖い夢をよく見る。この歳になっても、学校の教室に入ったらいきなり試験当日で自分だけ知らなくて配られた試験問題を見てもチンプンカンプンで愕然とするという夢は定番である。仕事に行こうと駅へ向かっているのにどんどん深い山奥に迷い込んでいく夢、トイレを探して走り回るがどこも人で一杯とか故障中で使えず慌てる夢、殺されそうになって逃げ回る夢もある。そこで目が覚めて、ああ、夢でよかった、とホッとするのである。身内の不幸を暗示して縁起が悪いとされる歯が抜ける夢、それも全部抜けてしまう夢を見ることもあるが、今のところ、それで実際に不幸が起きたことはない。髪が寂しくなってくる年頃のためか、髪の毛が全部抜ける夢も見るが、幸いまだ髪の毛は何とか残っている。
夢見が悪いと気分もよくないが、森田正馬先生が患者さんの指導の際に用いられた言葉「迷いの中の是非は是非とも非なり 夢の中の有無は有無とも無なり」(260話:大久保彦左衛門著『三河物語』冒頭に書かれている言葉)の通りであり、いい夢を見ようが悪い夢を見ようが現実とは関係ないのであって、夢判断をする必要はない。怖い夢を見たら、夢で済んでラッキーだった位に思えばよい。日常生活で必要なことをやっているうちに、いつしか怖い夢のことも忘れている。
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私も先生と似たような夢をよくみます。
なぜか何十年も前の学生時代に戻っており、いきなり試験間近というシチュエーション。しかし自分は全くの準備不足どころか、試験範囲すらわからないという有り様。
それこそ100回くらいこのパターンの夢をみたと思いますが、夢の中ではいつでもそれが現実のように感じられます。
森田先生は、鈴木知準先生に対して、夢は楽しむものであると言ったそうです。
私もこのような考え方をすれば、夢をいちいち気にすることもなくなってきました。
投稿: 西岡 | 2016年9月16日 (金) 14時05分
西岡様
コメントいただきありがとうございます。
学生時代に戻って、いきなりの試験でパニックになる夢は、私や西岡様だけでなく意外とあるようです。
夢は楽しむもの・・・怖い夢もホラー映画をタダで見たと思えばもうけものかも知れませんね。
投稿: 四分休符 | 2016年9月16日 (金) 21時51分
怖い夢見ます。一生合わす顔がないと思っている人のホームパーティに気が付くと紛れ込んでいて、どうやって逃げるか悩むとか・・
この苦手な人は奥さんが美人でとても悩ましい夢にもなります
こないだは見知らぬ男に自転車で追いかけられ、必死に逃げても追いつかれてしまい、その男に局部を触られる、どんなに振り払って触られ続けるという、バカバカしくも不快極まりない夢を見ました
86才の母はデパスを飲みたがります。よく夢を見て、笑顔の時もあるのですが、悲鳴のような大きな声を出すこともよくあります。
血液内科の先生にはデパスを止められましたが、飲むと胸の苦しさが取れると申します。
投稿: たらふく | 2016年9月17日 (土) 00時18分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
どれも確かに見たくない夢ばかりですね。しかし、相手が夢では何ともしかたなしです。
デパスは効果は大きいですが筋弛緩作用が強いので御高齢の方にはあまり適しません。漢方薬あたりで合うものがあるといいのですが。お母様にはぜひ快適に長生きしていただきたいですね。
投稿: 四分休符 | 2016年9月17日 (土) 19時35分