神経質礼賛 1307.夢と幻覚
デイケアで月一回お話ししている「日常生活に生かせるワンポイント森田療法」は先週で9回目になった。私の勤務先の病院のデイケア参加者には統合失調症の方が多い。そこで前話の悪夢の話をした上で、幻覚(幻聴)についても話をした。なお、私のように突然試験の場面でパニックになる夢をよく見るという方は参加者の中にもおられ、スタッフの中にもいた。
もちろん、幻覚は夢とは全くメカニズムが異なることなのだが、共通点がある。それは、本人にとっては極めてリアルなものとして感じられるが現実ではない、という点である。幻覚を体験していない人にとってはわかりにくいけれども、怖い夢を見ている時は自分もリアルに見たり聞いたりしているのだから、それが日常生活中に起きたらさぞ辛いだろうな、と考えれば、理解を深め共感してあげることができるだろう。
私の外来患者さんに、「愛しているわ」「○○まで来てね」という女性の声がしょっちゅう聞こえてくる、という男性患者さんがいる。以前は本当に呼び出された場所に行ってしまったことも何度かあったそうだが、もちろん女性が待っていることはなかった。だから本人も体験的に、これはまたいつもの幻聴だろうなとわかってはいるが、やはり気にはなるそうである。幻聴はその人の脳内で起きている現象であるから、よくある「バカ」「死ね」など悪口のような幻聴に対して「うるさい!」「バカはお前だろう!」などと叫んでしまうと、それに対する考えが起きてさらなる幻聴を発生させやすい。この悪循環を防ぐには、幻聴は相手にしないのがよい。リアルに感じられても、体験的に幻聴らしい、あるいは他の人の指摘からやはり幻聴かなあ、とわかった時には前話の「夢の中の有無は有無とも無なり」という対処法がよいようである。前述の男性患者さんも、気にはなりながらも幻聴をあまり相手にしないことで何とか仕事は続いて収入を得て生活している。
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「日常生活に生かせるワンポイント森田療法
」は先週で9回目に・・・
を
とやり過ごします
ぜひ、公に発表なさって頂きたいです。灯りをもっと高く掲げるのココロです。
幻覚、幻聴は他人事でないお話です。
♫もしかして、俺に気があるんじゃないの
♫俺がそんなにもってる訳はないよ!
投稿: たらふく | 2016年9月19日 (月) 10時33分
たらふく様
コメントいただきありがとうございます。
「ワンポイント森田」は11月に東京で行われる森田療法学会の一般演題で紹介させていただく予定です。
誰でも歳を取って認知症傾向となってくれば、幻覚は起こりえます。仰るように、他人事ではありません。
投稿: 四分休符 | 2016年9月19日 (月) 12時26分