神経質礼賛 1326.支配欲
11月13日(日)の毎日新聞に掲載された小池龍之介の「つながりの引き算」と題するコラムは「支配欲のむなしさ」がテーマで、夫婦間のいさかいを例にして、支配欲に基づく怒りについて述べていた。小池さんは、私たちには身近な人の気に入らない部分に「こうしろ」「ああしろ」と働きかけて思い通りに支配したいという欲があり、支配欲に駆られて自分の考えを押し付けようとすれば相手は反発して思い通りにはいかずに怒りを感じることになるという。そして、相手の中では起こらないはずの因縁を起らせようとするのは因果法則に反するのだから、他人の世界に入り込んで変えるのは無理だと諦めれば平和になる、と僧侶らしく結んでおられる。
以前紹介したことがある森田先生の結婚の組み合わせに関する話でも、結局は支配欲が関係を悪くする要因であり、互いに許し合うことで円満になれるということになるだろう。
(倉田百三の「神経質同士の結婚はよくないようですね」という発言に対して)
それはそうです。神経質同士は、お互いにその心持がわかり、心の底まで見透しているから、互いにその欠点を挙げあって、相手ばかりにそれを改良させようとする。グジグジといつまでも、しつこく言い争いをする。
またヒステリー同士でも、これもいけない。喧嘩が早くて始末にいけない。
また陽気の者同士もいけない。気が軽くて家のしまりができない。およそ結婚は、気質の異なった人が、うまく組み合わされるとよい。
神経質の人は、気の軽い大まかな人と結婚するがよい。すると気の軽い人は、あの人はどうせ気難し屋だからといって大目に許し、また神経質の方では、どうせあれには、難しい事をいってもわからないといって、あまりやかましくいわなくなる。お互いに許し合うから円満になる。 (白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.729)
夫婦関係、親子関係、兄弟関係では、このくらいわかってくれるはずと考えがちであり、もっと自分のためにしてくれてもいいだろうという甘えが出やすい。また、職場や学校での人間関係に比べると一緒にいる時間・期間が長くて距離を置くことが難しい。そこで支配欲をむき出しにすると関係がこじれやすい。自分にとって都合の良い「かくあるべし」を相手に押し付けようとすれば関係が悪くなるのは必然である。相手は簡単には変えられない。「気に入らぬ 風もあろうに 柳かな」(895話)、堪忍である。そして、嫌な気分については感情の法則(442話)を思い出そう。
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