神経質礼賛 1336.聚光院
公休日に京都の大徳寺聚光院へ行ってきた。駅や電車にある「そうだ京都行こう」の写真パネルを毎日見ているうちに、ぜひ狩野永徳による障壁画の実物を見たいと思ったからだ。聚光院は今年創建450年にあたり、普段は博物館に保管されている国宝の障壁画を里帰りさせて特別公開している。拝観はネット予約で、空き状況をカレンダーから見て空いている時間帯に予約を入れるというやり方になっている。拝観時間は40分間。予約は20分おきで、1回あたり定員は15名位らしい。1か月前に予約を入れた。
大徳寺は中学の修学旅行でその中の塔頭の大仙院へ行ったきりである。コンパクトによくまとまった枯山水庭園、そして当時まだ若かった住職・尾関宗園さんの気合いの入った説法が強烈に印象に残った。「今頑張らずにいつ頑張る!!」と修学旅行生たちに喝を入れておられたのを思い出す。不安はそのままにして今を生きることを説く森田療法も禅の教えと共通する部分がある。
予約の時刻は朝一番の9時だった。8時に京都駅に着く。京都駅から大徳寺までバスで行けるけれども、もし渋滞で遅れたら困るので、まず地下鉄で北大路まで行く。地上に出てバス乗り場を探すが見当たらない。どうやら地下にバスターミナルがあるらしく、あわててまた地下へと潜る。バスに乗ってしまえば大徳寺前はすぐである。22もの塔頭がある境内はとにかく広い。あらかじめプリントアウトしておいた地図を見ながら聚光院に20分前に着いて受付の開くのを待つ。足から寒さが伝わってくる。受付をして建物に入ると、手荷物はすべてお預りします、とのことで係員に手渡す。ガイドの人の案内で拝観していく。永徳の「花鳥図」は博物館や美術館で見るのと異なり、自然光が差し込み磨かれた木の床に反射している中で見るとタイムスリップして見ているような感がする。「琴棋書画図」とも永徳がまだ24歳の時の作で力強さが伝わってくる。面白かったのが永徳の父・松栄による「竹虎遊猿図」だった。虎はどこかユーモラスである。そして猿の一家は狩野家を表しているのだそうだ。木の上の目立つ白猿は松栄の父で狩野派の画法を確立した元信を示している。木の下には茶色の夫婦猿が座っていて、雌猿が白い小猿を抱っこしている。この小猿は大天才・永徳で、ちょっと冴えない表情の雄猿は松栄自身だという。自分の父そして息子の狭間で目立たない存在になってしまっているが、どうして、なかなか良いではないか。拝観コースは茶室の中を見学し、最後に千住明による現代の障壁画「滝」を見た。群青と白だけの大迫力の画だった。
聚光院を後にし、さらに期間限定で公開している興臨院も最終日に拝観することができた。そのすぐ近く大慈院の泉仙という精進料理の店に入る。通路から見える名残の紅葉が美しかった。
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