神経質礼賛 1350.ローカル路線バス
勤務先の病院は山の中腹にある。外来患者さんからは「山の病院」などと呼ばれている。移転前は三島から裾野・御殿場を結ぶ県道に近く、路線バスも1時間に4本位あって、私も路線バスで通勤していた。いざとなれば駅から歩くこともできた。現在の地に移転してからは山の住宅街に上がっていくバスが1時間に1本あるかないか、とても不便である。特に土日祝日はさらに本数が少なくなる。朝、駅へ向かう便はそれなりに通勤・通学の人が乗っているが、それ以外はスカスカである。当然、本数は年々減る一方である。通院患者さんをマイカーで送迎している親や兄弟が高齢になって運転が大変になってきたので、他の医療機関を紹介してほしいと頼まれることが時々ある。
こうしたローカル路線バスの状況は都心を除く全国どこでも同じで、マイカーの普及により、路線バスの採算悪化⇔不便なため利用者減少という悪循環に陥っている。バスの減便や路線廃止は車を手放した高齢者にとってはとても困ったことである。
10年ほど続いた「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」という番組がこの1月の第25回で一段落した。何度か見たことがあるが、単なる旅番組と違い、ハラハラでつい最後まで見たくなる番組だ。太川陽介・蛭子能収(えびすよしかず)の二人組がゲストの女性タレントと3人で、ローカル路線バスだけを使って3泊4日で目的地まで行く、というものだ。電車はもちろん高速道路を通るバスやタクシーやヒッチハイクは不可、ネット使用不可という厳しい条件があって、なかなか難しい。地図上にはバス停が書いてあっても、1日1便か2便しかないとか、運行日が限られるとか、その路線は去年廃止されました、ということがよくある。バスが途切れている県境の山越えなどは5kmとか10km徒歩のため暑さや大雨や雪の中では過酷な状況になる。ローカル路線バス網が年々縮小しているので、こうした番組を制作するのは難しくなってきているだろう。この番組ではリーダー役の太川さんの神経質ぶりが目立つ。マイペースの蛭子さんがバスの中で寝てしまうのに対し、何度も地図を確認してバスが繋がりそうなルートを熟考し、運転手さんや案内所の人や地元の人に聞いて情報を集める。あとの二人の体調を気遣い、へこたれそうな時にはムードを盛り上げ、昼食を取っていられない時には三人分の食物を調達する。一日の最後には翌朝のバスの行先と時刻を確認し、皆で遅い夕食を食べる。その時、生ビールをおいしそうに飲む太川さんの表情が実にいい。神経質を駆使していても時には休符があるとよいものだ。
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