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2017年1月23日 (月)

神経質礼賛 1348.森田貞子女史逝去

 119日、三島森田病院理事長・森田貞子女史が急逝された。大正154月、高知県のお生まれで、享年90。森田正馬先生の養子で三島森田病院を創設された夫の秀俊先生が亡くなられた後、ずっと理事長として病院を切り盛りされてきた。さすがに2,3年前に車の運転はやめられたが、毎日午前中は病院に出勤しておられ、最近もお元気そうだった。まさかこんなに急に亡くなられるとは思いもよらなかった。本日が葬儀だが、私は外来担当日で動きが取れないため、昨日の通夜に参列した。

かつて院長宅は病院のすぐ近くにあった。森田正馬先生のお世話をしていた親戚筋の田原綾(84)さんが病院の寮に住んで森田療法の患者さんたちを指導していた。貞子女史は森田療法の患者さんたちはもちろん、閉鎖病棟の患者さんたちにも気軽に声をかけて話をしておられたから、とても家族的な雰囲気の病院だった。正馬先生の形外会と同様に森田療法で退院した人たちを集めての三島での形外会では、秀俊院長とともに座談会に参加し、参加者たちと肩を組んで合唱している貞子女史の写真が残っている。また、森田療法学会の初期には森田正馬賞の副賞をポケットマネーで出しておられたと聞く。近年は病院経営的には「お荷物」となっている採算の取れない森田療法を続けてきたのも貞子女史の気概によるところが大きいと思う。

平成15年に病院は新築移転しているが、その際ご自宅も病院近くに移転されている。その頃、私は一度ご自宅に呼ばれたことがあった。日当たりの良い広い応接室には新しいピアノがあった。昔買ったというヴァイオリンを出してこられ、「何か弾いて下さいよ」と言われてバッハを弾いた記憶がある。貞子女史は趣味で手芸をしておられ、ビーズとカラー針金で作った花と稲穂をおみやげに頂いた。

貞子女史は人間味あふれた循環気質的な性格だったとともに、土佐の言葉で男勝りの「はちきん(418)」的な性格も持ち合わせていたように思う。病院の忘年会の際にカラオケで歌う曲は「昴」と「南国土佐を後にして」が多かった。毎年、高知へ墓参りに行かれ、私たち勤務医は名物の茹で卵入りのかまぼこをお土産にいただいていたものである。

貞子女史のご冥福をお祈りいたします。合掌。

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コメント

50年ほど前に入院森田療法を経験した者です。
四分休符様は「病院経営的には「お荷物」となっている採算の取れない森田療法」とお書きになりましたが、昔は何故、採算が取れていたのでしょうか?

森田療法をよく知り、守り続ける "いしずえ" のような森田先生が亡くなられたのは
寂しく、残念です。ご冥福を心よりお祈りします。

 三島森田病院では絶対臥褥期間(通常1週間)の個室料以外はすべて保険医療でやっていますから、昨今の保険医療制度では非常に厳しい状況なのです。20年前・30年前とは大きく変わっています。厚労省は精神科の入院患者を減らすためにあの手この手を使ってきます。精神科救急のように多数の看護師さんを配置して重症患者さんを短期間で治療していくようなスタイルにしなければ保険点数が上がりません。京都の三聖病院が廃院となったのも院長先生の高齢化、入院患者さんの減少、という以外に保険医療制度の変化が大きかったと聞いています。

たらふく様

 コメントいただきありがとうございます。

 現代の精神科医療では治療に携わる人たちの心意気が希薄になっているような気がします。森田貞子女史のような心の火を受け継いでいかなくては、と思います。

最近は神経症の治療法として認知行動療法が広まっているようですが、認知行動療法の場合は、20
年以上前の入院森田療法よりも保険点数が高くて採算が取れるのでしょうか?

 厚労省は精神科病院の病床数を大幅に削減することに躍起になっています。確かに平成28年度改定では、認知行動療法に対する保険点数を新たに設定しています。しかし、その条件を厳密に考えると私どもの施設では取れません。また、デイケアの長期利用者さんの保険点数のカットも今年度から行われています。厚労省の施策に沿ったことをやれば一時的には保険点数が上がりますが、しばらくするとハシゴをはずされて、そこにかけた設備や人材の処理に困ることになります。
 そうした医療経済に御興味がおありでしたら、医療サイトでお調べになられたらよろしいかを存じます。特に医療関係者限定のサイトには議論する場もございます。

森田療法が採算が取れないというのは本当に残念ですね。
私は不眠から来る悩みで薬を飲んだり西洋的カウンセリングを受けたりもしましたが、悪化するばかりであり結局治った(症状はありますが)のは、森田療法でした。

お医者様も生活がありますし、病院は経営がありますから仕方ない面はありますが、神経症を「治す」唯一無二の方法は森田療法であると思います。
国や国民がそれを認識すれば道は開けると思うのですが、製薬会社などの力が強すぎて難しそうですね。本当に残念。

西岡 様

 コメントいただきありがとうございます。

 森田正馬先生の時代は今のような健康保険制度はありませんでしたから、いわば完全に自費診療(自由診療)でした。現在の健康保険制度の中で入院森田療法をやっていこうとすると難しい面が年々増えてきています。
 神経症(森田神経質)の治療では長い目でみれば医療費が少ない、根本的な治療法であって、そのあたりを国が認めてくれるとよいのですが、なかなかそうはいきません。
 森田療法の本質を失わずにいかに工夫して実質的な森田療法を続けていくかが課題です。

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