神経質礼賛 1370.忖度(そんたく)
国会で忖度という言葉が飛び交っている。一般にはあまり使われないこの言葉の意味は、「他人の心中を推しはかること」である。有能なビジネスマン・サラリーマンたちは、上司や関係筋や上得意様の意向を汲み取って行動している。A首相夫人が関連していたという小学校の設立に関して公務員たちが首相夫人ひいてはA首相に恥をかかせることのないように忖度して便宜を図るのは何ら不思議ではない。私大新設などに関してもそういうことがあるようだ。普段は腰が重いのに、首相のオトモダチが関わる大学ともなれば官公庁も最優先で動いてくれる。日本では、まだまだコネがはびこっている。公務員は有力者に対して忖度するのではなく弱い立場の人に対して忖度してほしいものだ。
忖度をし過ぎる、他人の思惑を過度に気にするのが対人恐怖の人である。自分はどう思われているだろうか、人が自分を変に思っているのではないか、などとあれこれ考えているとますます緊張が高まり震えたり赤面したりドキドキしたりするものである。そして、人前に出たり会食したりする場面を避けていると、さらに重症化して、ついにはひきこもりになってしまう。忖度することそのものが悪いのではない。頭を空転させて必要な行動をとらないのがいけないのである。理屈より行動である。森田正馬先生は患者さんたちに、尻軽く人が便利なように行動するようにと指導しておられた。神経症に悩む人には幼弱性(997話)があることが少なくない。人の役に立つように行動していくようになれば自ずと注意が外へ向いて症状が軽減するとともに、神経質を生かして社会適応も良くなっていくものである。
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