神経質礼賛 1367.大吊橋
この連休はずっと日直当直が続き病院内にカンヅメである。その前に三島大吊橋(三島スカイウォーク)へ行ってみた。デイケアの利用者さんたちや外来患者さんたちは行ったことのある人が多いので、話のタネに一度は行ってみないと、というわけだ。一昨年の暮れに開業した観光施設であり、歩行者専用吊橋としては国内最長の400m。場所は三島市街地から国道1号線を箱根に向かって山を上がっていく途中にある。三島駅から箱根行きのバスは1時間に1-2本。往復だと三島市内1日乗り放題の「みしまるきっぷ」900円を買った方が安いので、駅前の東海バス窓口で購入する。みしまるきっぷを手にした中高年者たちでバスはほぼ満席である。中国人観光客も目につく。
敷地内に入っても橋の全容は見えない。料金を払って入った人だけが見える仕掛けになっているのは、よく考えたものだと感心する。駿河湾から富士山まで見渡せる絶景がウリなのだが、あいにくこの日は富士山に雲がかかっていて見えなかった。通路の幅は1.6m。係員が「左側を歩いて下さい」と案内しているので、対向者とぶつかることもない。通路の中央部分は下が見えるようになっていて、絶対に落ちることはないとわかっていても下を見ているとかなりの高度差があるからそれなりに怖さが出てくる。橋全体が風や通行人の動きによってユラユラと揺れる。立ち止まって景色を見ていると揺れは気になる。あまり気持ちがいいものではない。やはり前方の遠くを見ながら淡々と歩いて行くのが一番良い。
吊橋が怖くて渡れない、飛行機が怖くて乗れない、という高所恐怖症の人は時々いるけれども、それを主訴に精神科を受診する人にはお目にかかったことがない。ビル工事や高層ビルの窓拭きといった誰が見ても危険な場面でなければ、仕事で必要となればどうにかクリアできるものだし、そのうち慣れてくるからだ。恐怖症全体に言えることは、怖がっていて何もしなければ怖いままである。怖いまま仕方なしにそうした場面を経験していけば、いつしかさほど怖くなくなっているのである。
森田先生の言葉を紹介しておこう。
我々は、人生の丸木橋を渡るのに、足元を恐れないような無鉄砲の人間になるのが目的でなく、彼岸に至りさえすればよい。座禅や腹式呼吸で、心の動かない、すましこんだ人間になるのが目的ではなく、臨機応変、事に当たって、適応して行く人間になる事が大切である。(白揚社:森田正馬全集 第5巻 p.519)
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