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2017年4月 7日 (金)

神経質礼賛 1373.岩佐又兵衛

 4月3日の毎日新聞夕刊「アートの扉」というページに熱海のMOA美術館で現在公開中の岩佐又兵衛(1578-1650)作とされる重要文化財「山中常盤物語絵巻」が写真入りで大きく紹介されていた。この絵巻は義経伝説を題材にしている。のちに源義経となる牛若丸は奥州藤原氏の庇護を受けるが、母親の常盤御前が牛若に会うために侍女1人とともに奥州へと向かう。その宿泊先で盗賊たちに襲われて常盤と侍女は殺される。偶然それを知った牛若が盗賊たちをおびき出して仇を討つ。やがて元服した義経は大軍を率いて京に上り平氏を滅ぼし、常盤の供養を盛大に行う、という内容である。

 私は先月この展覧会を見ている。地図で見ると美術館は駅から近そうなので歩いて行くと、つづら折りの急坂が待っていた。20年位前に一度来た時も歩いて登って汗だくになったことをやっと思い出した。足に自信のある方以外は熱海駅から20分おきに出ているバスかタクシーを利用された方がよい。受付を通ってから暗い洞窟の中の長いエスカレーターを何本か乗り継いでようやく美術館の建物に辿り着く。後ろを振り返ると熱海の海の絶景が望める。近くに初島、その先に伊豆大島、遠く三浦半島。これ自体が絵のようであり、現実の世界を離れて別世界に来たような感がある。梅の季節にだけ公開されている尾形光琳の国宝「紅白梅図」の展示が終わってしまった直後で、今回の展示に替わっていた。

新聞記事の見出しに「気品と野卑みなぎる」とあるように、情景は美しい色遣いで精緻に描きこまれていながら、常盤が血を流して死んでいく姿をこれでもか、これでもかと繰り返し描いている。そして牛若の復讐により盗賊たちが次々と斬られていく場面も生々しい。どうしてこのような絵巻になったのだろうか。又兵衛の父親が荒木村重だと言えば、歴史好きの方ならば「ああ、そうか」と納得されるに違いない。荒木村重は織田信長に仕えていたが謀反を起こして失敗。村重は城から逃走したが、妻子や一族そして家臣たちは捕えられ惨殺された。又兵衛はまだ2歳で乳母がかくまって脱出させ、石山本願寺で育てられたのだった。源義経も父・義朝が平治の乱で平清盛に敗れて殺された。その血縁の者たちも探し出されて多くが殺された。常盤御前は今若・乙若・牛若の3人の幼児を連れて逃避行の末、捕えられて清盛の前に差し出された。息子たちの命乞いをし、清盛の妾となることで赦されている。だから又兵衛は自分を牛若丸に、亡き母を常盤御前に重ね合わせたのだろう。そしてこの絵巻を描くことが「喪の仕事」(577)であり、理不尽に命を奪われた母への追悼であったと考えるのが自然だろう。

展示室のちょっと重苦しい雰囲気から解放されて黄金の茶室(複製)を見る。奥に掲げられた「豊国大明神」の字は秀頼が子供の時に書いた真筆なのだそうだ。MOA美術館では展示作品等の写真撮影は自由とのことで、カメラをロッカーに置いてきてしまったのは残念だった。帰りのバスを待つ間、自然食品ショップで有機栽培米の日本酒の小瓶を1本買って帰る。

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