神経質礼賛 1385.あなたはそのままでいいんだよ
連休はどこも行かなかった代わりに今頃になって日帰りで京都へ行ってきた。京都国立博物館の海北友松(かいほうゆうしょう)展がメインである。今回は初めてJR東海の中高年向きツアー「50+」を利用してみた。乗車券と博物館の入場券と博物館でのランチがセット。ただし、往復は「のぞみ」や「ひかり」は使えず、時間指定の「こだま」自由席、というのが難点である(東京・品川・新横浜からの場合は「のぞみ」指定席になる)。まずは京都駅から歩いて国立博物館へ。行列に並んで入場待ち20分。平日というのに混んでいる。安土桃山時代から江戸時代初期にかけての絵師・海北友松の作品を時代を追って見ていった。建仁寺に収められた障壁画に妙心寺の鮮やかな金屏風。そして光量を抑えた部屋に並んだ雲龍図たちは迫力があった。絵の制作代金の領収書というような文書が残っているのも面白い。先の仕事の受注を考えて少々格安料金で作画していたらしい。
博物館内のレストランは入るのに30分ほど待ったけれども椅子に座っていられたのでさほど苦にはならなかった。ランチの内容はまずまず。デザートには京都国立博物館のゆるキャラ「トラりん」の絵が入ったチョコが添えられているのは微笑ましかった。
その後は近くの智積院(ちしゃくいん)へ行く。博物館と違って人が少なくてよい。狩野永徳とライバル関係にあった長谷川等伯の障壁画を静かにじっくり楽しむことができた。優れた絵師の息子を亡くしてから描いた楓図の楓はまるで油彩画のように厚塗りされていて、残された力を振り絞って描いていたことを感じさせる。さらに利休好みの庭園を見る。涼しい風と、さわさわと木々の声が爽やかで、ずっと座って眺めていたくなるような空間だった。
時間が余っていたがガイドブックや地図は持ってこなかったので、思いつきで京阪七条から電車に乗って伏見稲荷に行ってみる。外国人観光客の人気ナンバーワンの観光スポットである。確かにびっしり並んだ鳥居はインパクトがある。異空間に入ったような感がある。C国人観光客が大騒ぎしながら千本鳥居の中で自撮り棒を使ったりして写真を撮りまくっている。日本人は人にぶつからないよう、写真を撮るのにもなるべく周囲の人に迷惑をかけないように気を使うがC国の人々にはそうした神経質は皆無である。随所にある旅行者向けパンフレットはC国語のものが過半数を占め、JR稲荷駅のアナウンスは日本語とC国語である。そこまでC国人に媚を売らなくても、と思ってしまう。
京都駅に戻りまだまだ帰りの新幹線には時間があるので、駅から近いのに寄ることのない東本願寺と西本願寺に足を運ぶ。歩道の掲示板にある「あなたは そのままで いいんだよ」という祖父江文宏さんの言葉が心に沁みた。そう、あるがままだ。花は紅、柳は緑(第3話・拙著p.123-124)である。神経質は神経質のままでよいのだ。
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